上海総合指数、香港ハンセン指数ともに旧正月前に大きく上昇

1月末から急激な調整に入った中国株ですが、旧正月前に急反発となりました。上海総合指数は50日移動平均線まで調整後、横ばい基調でしたが、2月9日と10日に大きく上昇しました。なお、中国本土市場は2月11日(木) ~ 2月17日(水)が休場となり、2月18日(木)から再開されます。

香港ハンセン指数は上海総合指数よりも強い動きとなっています。1月末に株価は調整したものの、50日移動平均線のかなり上で調整が終了し2月初めから反発を始め、2月9日と10日に一段高となっています。香港市場は2月12日(金)~2月15日(月)が休場となり、2月16日(火)から再開されます。

上海総合指数が大きく上昇した2月9日を振り返ってみると、主要各国の量的金融緩和の継続や財政支出の拡大によって、コロナ後の景気回復への期待を背景に米国株を中心とした世界的な株価高の流れがありました。

その流れに中国株も、旧正月の長期連休前のポジション調整の売りをこなしたあとに、遅れて乗ってきた印象です。

3月上旬開催予定の両会(全国政治協商会議と全国人民代表大会)による政策期待に加え、原油価格を中心とした資源価格の上昇で石油、化学、素材・建材セクターなどが上昇を主導しました。2月10日には旧正月の消費需要拡大が期待されて消費者向けサービス株や食品・飲料株が買われています。

中国の快手科技が香港市場に上場

一方、香港市場で特筆すべきなのは2月5日にテンセント(00700)が約12%の株式を保有する、人気動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の競合相手である快手科技(01024)が上場したことがあります。

これによってテンセント(00700)や美団(03690)などのIT関連が大きく上昇するきっかけとなりました。このIT関連銘柄の上昇が2月上旬に中国本土市場よりも香港市場が強くなった大きな理由の1つと言えるでしょう。

快手科技(01024)は、ショート動画およびライブストリーミングという動画コンテンツをベースとするソーシャル・プラットフォーマーです。

中国は利用者ベースでショート動画の80%、ライブストリーミングは50%の世界シェアを占めます。その中で、快手科技(01024)のアプリ「快手(クアイショウ)」と、北京字節跳動科技社(バイトダンス、未上場)のアプリ「TikTok(ティックトック)」の2つが有名です。

ショート動画・ライブストリーミングのプラットフォーム規模では、首位バイトダンスが4億2,620万人の平均DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)を持つのに対し、快手科技(01024)は2億7,590万人で2位となっています。

また、快手科技(01024)は2018年8月よりライブストリーミングによるeコマース事業も開始しました。同事業は急成長して2020年1-9月の9ヶ月間の総取扱高が2,041億元(約3.3兆円)規模となり、こちらもアリババに次ぐ世界2位となっています。

収益は仮想ギフト(投げ銭)が大半を占めていましたが、強力なプラットフォームを有する点を活かし、徐々にモバイル広告収入が増えてきています。またeコマースからは手数料収入があり、そのほかオンラインゲームなど付加価値サービスによる収入機会を広げているところです。

同社のライブストリーミングプラットフォームは、仮想ギフトによる収入額と平均MPU(月間有料ユーザー数)で世界一となっています。

快手科技の株価は連日大幅高

2021年2月5日に行われた新規上場で快手科技(01024)は5,600億円の資金を調達し、2019年のアリババに次ぐ規模のIPOとなりました。また注目を集めた株価は連日の大幅高で、時価総額は22兆円規模になりました。これはチャイナモバイル(00941)やHSBC(00005)を抜いて、テンセント(00700)、アリババ(09988)、美団(03690)に次ぐ大手IT企業となるものです。

まだ赤字段階の成長途上にある企業ですが、高い成長期待によって特大の時価総額企業となり、早速同社株はハンセンテック指数や中国企業指数に採用が決まりました。香港だけでなく世界的にも米MSCIのグローバル指数に追加されました。

ソーシャルプラットフォームの世界は日々進化しており、世界で最もデジタル化の進む中国では新たな勢力が出てきています。カメラの精度が高くなり、様々な加工のできるアプリも登場し、個人が精度の高い動画を簡単にアップロードし、シェアできるようになりました。

快手科技の中長期の成長に注目

5Gによる高速通信で、動画利用はより一層進み、人々のSNSツールとして定着していくでしょう。それに伴って動画広告市場が今後急拡大し、動画を使ったネット通販市場も大きくなりそうです。

このような変化によってテンセント(00700)やアリババ(09988)も安泰ではなく、チャットアプリ「微信」の利用時間も新興の動画勢力に浸食されてきています。

テンセント(00700)は快手科技(01024)に出資し、大株主としてティックトックに対抗すべく提携を進めてきました。一方、快手科技(01024)の利用者は急増していますが、マネタイズ化は始まったところで、同社業績は2022年に黒字転換予想とかなり先の見通しになります。

それでも株価が先行して上昇しているのは美団(03690)が当初赤字で上場し、その後黒字転換する過程で大幅に株価上昇となったイメージが投資家に残っているのでしょう。

快手科技(01024)の株価には割高感も感じますが、強力なプラットフォームを有している有望な会社であり、成長性は十分期待できると私は思います。中長期の注目銘柄として引き続きチェックしていきたいところです。