中国株が急激に調整した理由は?

2021年に入ってから堅調に推移していた中国株ですが1月末に急反落となりました。

上海総合指数は1月25日にはザラ場高値の3,637.10ポイントを付けましたが、1月29日には一時3,446.547ポイントまで急落しました。香港ハンセン指数も1月25日にはザラ場高値の30,191.16ポイントを付けましたが、1月29日には一時28,259.73ポイントまで下落しました。

株価が急激に調整した理由は3つあると思います。

1つは世界的な金融緩和と財政投資拡大期待で急上昇してきたことに対する自然な調整です。これは中国株だけでなく、世界の株式市場全体についても言えることだと思います。実際のところ、米国株や日本株も同時期に調整しています。

中国株は直近の上昇が急激だった分、調整も大きなものとなりました。しかしながら、調整したあとも上海総合指数、香港ハンセン指数ともに50日移動平均線より指数は上にあり、上昇トレンドが継続しているものと見ることが出来ます。

2つ目の理由は中国金融当局が金融政策についてやや引き締め気味の姿勢を見せていることです。これは日米欧の中央銀行には見られない姿勢です。中国は潜在的な成長力が大きい分、安易な金融緩和を続けているとバブルが発生してインフレを招く可能性があります。そのため、中国の金融当局は引き締め気味の姿勢を取っていると考えられます。

中国の経済指標を見ると堅調な数字が出てきています。12月のドル建て輸出は前年同月比18.1%増と市場予想の15.0%増を大きく上回っており、2020年の輸出においては主要国としては唯一プラス成長になったとみられます。

中国の1月の鉱工業生産も前年同月比2.8%増と市場予想の2.7%増を上回っていますし、小売売上高も前年同月比4.6%増と市場予想の5.5%増は下回ったものの強い勢いを持続しています。それだけに金融当局としては景気の過熱を懸念し、金融政策の中立化や流動性の吸収に動いていると考えられます。

2020年12月には中国人民銀行、銀行保険業監督管理委員会が「銀行業金融機関の不動産貸出集中管理制度作成に関する通知」を発表しました。これは金融機関をグループ分けし、グループごとに不動産向けの貸出比率、個人住宅ローン比率に制限を課すものです。

また、1月の最終週には公開市場操作で4705億元を市中銀行から吸収しています(ただし、その前週と前々週は供給しています)。さらに、上海銀行間取引金利(SHIBOR)の翌日物は1月28日に3%を超えました。これらの事を受けて、中央銀行が引き締め姿勢を強化するのではないかとの懸念が株価下落の要因の1つになったものと思われます。

3つ目の要因は旧正月が迫っていることです。中華圏では2月12日(金)に旧正月を迎えます。このため、中国本土市場は2月11日(木) ~ 2月17日(水)が休場となり、香港市場も2月12日(金) ~2月15日(月)が休場となります。

日本の投資家で言えば年末年始やゴールデンウィークの長期休暇中に国際市場で波乱があって急落することに警戒して、年末年始やゴールデンウィークの前にはポジションを落とすことがあります。

同様に、中華系の投資家も旧正月前には一旦ポジションを閉じやすい傾向があり、市場の反転要因となり得えます。このあたりも調整の一因となっている様子です。

旧正月後の反発に期待

ここまで述べてきたように中国株は大きな調整となっていますが、この調整は急激な上昇に対する自然な範囲内での短期的な調整であると考えています。中国経済は回復基調となっている上、IT企業を中心に企業業績は堅調ですし、世界的な金融緩和と財政投資拡大への観測も変わっていないためです。

このように考えていくと、旧正月前の株価調整局面は優良銘柄を拾うチャンスだと考えることもできるのではないでしょうか。特に旧正月明けからの反発に期待したいところです。