上海総合指数は調整基調

12月上旬の上海総合指数は調整基調となりました。上海総合指数は12月11日に一時的に50日移動平均線と200日移動平均線を割り込みました。しかし、その後すぐに反発して、現在(12月15日執筆時点)の株価は50日移動平均線と100日移動平均線のすぐ上に位置しています。

一目均衡表を見ても株価はまだ雲の上にあり、転換線も基準線を下に突き抜けていません。ただ、遅行線は株価を下に突き抜けるかどうかの所まできています。

続く米中覇権争い、中国株の伸びきれない要因に

株価が調整基調となっている理由としては、世界的な新型コロナウイルスの感染再拡大に加え、米中関係の悪化が懸念されていることが挙げられます。特に米国政府によって中国人民解放軍関連企業と認定された8銘柄について、FTSEラッセルがFTSEグローバル株式指数などから除外すると発表したことが嫌気されています。

もしMSCIやナスダックがFTSEラッセルに追随するようなことがあれば、影響はさらに大きくなり、中国株から全体的に資金が抜けていく可能性があります。

米国で12月14日に行われた11月の米大統領選で選ばれた選挙人による投票では、バイデン氏が過半数票を確保しています。このまま米国でバイデン新大統領が誕生するとグローバル化が再開され、トランプ米政権下より米国の対中政策は融和的になるとみられます。しかし、長期的な米中の覇権争いの構図はなくならないと思われます。

その時、非常に重要なのが株式市場です。現在、世界の株式市場の時価総額の上位銘柄の多くは米国企業となっています。時価総額が大きいことは大きな力に繋がります。

特に現在重要な位置を占めるITセクターにおいては、製造業企業のように大きな土地や工場などの固定資産を持っているわけでなく、原材料などの仕入れも殆どありません。IT企業の費用の中で大きいのは高騰しているIT業界の人件費です。それは原価、販売費、研究開発費、一般管理費それぞれの中で発生します。

しかし、高い時価総額があれば、少しの自社株を潜在株として発行するだけで、株式報酬を従業員の対価として支払うことが出来ます。時価総額が莫大であると実質タダ同然の費用です(時価総額が高くないと株式の希薄化が問題になります)。

ともあれ、米国は金融政策を緩和的にして、財政投資を行い、できる限り経済と株価の上昇を続けながら米国全体の国益を伸ばそうとしているように見えます。その中で米国の株式市場や国際金融市場から中国企業を閉め出すことは、米中覇権争いに関して重要なことであり、今後もその傾向は続いていくと見ています。これが中国株の伸びきれない大きな1つの材料になってしまっているようです。

中国の経済指標は堅調

その一方で、直近で発表されている中国の経済指標は堅調です。11月のCaixin中国製造業PMIは54.9と、市場予想の53.5や前月実績の53.6を上回りました。Caixin中国サービス業PMIも57.8と市場予想の56.4や前月実績の56.8を上回りました。

また、11月の輸出は前年同期比で21.1%増と大きな伸びとなり、こちらも市場予想の12.0%増や前月実績の11.4%増を上回りました。そして、マネーサプライ(M2)も10.7%増と、市場予想の10.5%増や前月実績の10.5%増を上回っています。11月の新規人民元建て融資は1兆4300億元と、市場予想の1兆4500億元は下回ったものの、前月の6898憶元を大きく上回りました。

米中問題は引き続き株式市場の重しとなるでしょう。しかし経済指標を見る限り、中国経済は明らかに上向いてきています。米国や英国では新型コロナワクチンの供給が開始されましたが、いずれ中国でもワクチンの供給が開始されるでしょう。そうなると、中国経済は一段の拡大を示すと思われます。

これに加えて中国でも政策期待があります。米国による中国企業の締め出しがある一方で、中国も自国の株式市場の振興策を打ち出してくるでしょう。また、足元では中国当局が内需拡大戦略を継続する見方を打ち出しており、2021年の経済政策を決定する中央経済工作会議が近く開かれる見通しです。そこで、何らかの対策がこれから打ち出されてくる可能性もあります。

このように考えていくと、中国株が軟調になったところは引き続き買い場と考えていくことが出来るのではないでしょうか。