上海総合指数は堅調な推移

11月後半の上海総合指数は堅調な推移となりました。

上海総合指数の株価推移を見ると、10月末から11月初めに100日移動平均線を支持線として反発しており、夏場につけた高値を超えていきそうな様子です。一目均衡表を見ても、株価が雲を上抜け、転換線が基準線を上抜け、遅行線が株価を上抜ける、いわゆる「三役好転」という買いサインが出ています。

株価が堅調な背景には、米大統領選で親中派のバイデン氏の勝利がほぼ確定して無事イベントを通過できたことが挙げられます。また、バイデン氏が掲げているクリーンエネルギーを中心とした大規模財政投資への期待、世界的に大規模な量的金融緩和政策が継続していること、新型コロナワクチン開発への期待などもその要因に挙げられます。

その他、中国政府が11月19日に自動車、家電家具、レストランや、農村地域での消費活性化策を打ち出したこと、国務院金融穏定発展委員会が債券市場の安定強化策を示したことなども背景にあります。

また、米国の長期金利が上昇していることから、世界的に金融株が上昇し、中国本土株でも銀行株や保険株が上昇しました。中国や世界のコロナ後の経済回復を期待して、銅などの金属価格が上昇していることから資源関連株も大きく上昇しています。

なお、トランプ米政権が新たに中国人民解放軍の関連企業に制裁を検討しているとのニュースもありましたが、株価への影響は限定的でした。

中国の経済指標も堅調

中国の経済指標も堅調なものとなっています。

10月の小売売上高は前年同月比4.3%増と市場予想の5.0%増を下回ったものの前月実績の3.3%増を上回りました。10月の鉱工業生産も前年同月比6.9%増と、市場予想の6.7%増を上回っています(9月実績は6.9%増)。

また、1-10月の固定資産投資も前年同期比1.8%増と市場予想の1.6%増や、1-9月の伸び率0.8%増を上回りました。さらに、10月の中国の工業企業利益も前年同月比で28.2%増と、伸び率が鈍化した9月の10.1%増から大きく加速しています。

香港ハンセン指数は上昇

11月後半の香港ハンセン指数は上昇となり、7月につけた直近高値を抜いてきました。こちらもやはり、米国の金融緩和と財政投資拡大への期待や、新型コロナワクチン開発への期待が株価を支えました。

また、香港株は中国本土株よりも米国株により強い影響を受けますので、米国株が堅調な推移を辿っていることも追い風でした。引き続き米国の長期金利上昇を背景として、HSBC(00005)やスタンダードチャータード銀行(02888)、平安保険(02318)といった金融株が大きく上昇し、株価を牽引しました。

香港の独自要因としては、香港一の大富豪である李嘉誠氏が自社株を大量購入したとの報道や、香港の林鄭月娥(りんてい げつが)行政長官が11月25日の施政方針演説で、香港を「再び立ち上げる」と明言したことから、香港地場の不動産ディベロッパーが総じて堅調となったことがありました。

一方、テンセント(00700)やアリババ(09988)など、これまで株価が好調に推移してきたITハイテク大手は、引き続き横ばいまたは軟調な動きが続いています。

ただ、直近で発表された7-9月期の業績を見ると、今後には期待が持てそうです。

たとえばテンセント(00700)は11月12日に第3四半期の業績を発表しましたが、売上は前年同期比29%増、純利益は89%増で、株式報酬費用や、子会社の時価評価見直しに伴う損益、無形資産償却費用などの一時的項目を調整した非IFRSの純利益でも32%の増益で、共に市場予想を上回って着地しています。

ITハイテク大手への規制や取り締まりは足かせにならない

なお、テンセント(00700)やアリババ(09988)などのITハイテク大手に関しては中国政府による規制が懸念されてもいます。しかし、米国でも同様の懸念は長らくあり、古くはマイクロソフトへの独占に対する取り締まりがありました。

またトランプ米大統領は2020年夏に中国ソーシャルメディア大手テンセントの微信(ウィーチャット)を米国で禁止する大統領令に署名し、直後に同社株が約1割急落したこともありました。しかし、今やそのことは忘れられたかのように高値を取り戻しています。

結局、規制や取り締まりはハイテク企業の成長を止めるものでなく、アントグループの上場延期がそうだったように、「行き過ぎたことをするな」というメッセージに過ぎないと思います。中国当局にしてもハイテク企業は自国の成長の大きな柱の1つであり、最大の雇用と需要を生みだしており、完全に叩くということはないと考えられます。

テンセント(00700)は当局とも調和的で、方針を遵守して経営を進めている印象です。

今回の決算を見ても、テンセント(00700)のコア事業は強く、非常に高い利益率を持つことがわかります。そしてその他の新規事業が育ってきており、事業ポートフォリオは一段と強化されてきています。

テンセント(00700)は12億人のチャットアプリ「微信」に続き、動画や音楽など娯楽コンテンツや決済、資産運用でも多くのユーザーを抱えています。それら基盤から広告や出前、ショッピング、ゲームなど相互に事業機会が広がるとともに、長期的な成長が続いていくと思われます。