上海総合指数は小幅に上昇

11月前半の上海総合指数は小幅に上昇しました。米大統領選でバイデン氏の勝利がほぼ確定したことを受けて、不透明感が払拭されて米国株が大きく上昇していることや、バイデン氏がトランプ米大統領より親中寄りであることが要因として挙げられます。

その他にも、新型コロナウイルスのワクチン開発や米国の景気刺激策への期待から、米国の長期金利が上昇して世界的に金融株や景気循環株が大きく上昇する中で、中国本土株でも金融株や景気循環株が上昇しました。また、中国の金融政策・景気刺激策への期待などもその背景にあります。

人民元が高くなっていることも中国への資金流入を想起させました。セクター別には、バイデン米大統領誕生への期待から、これまでの米国の制裁で主な標的になった半導体メーカーや次世代通信規格5G関連企業が上昇しました(ただし、その後トランプ米大統領が中国の軍や情報機関を支援していると判断した中国企業31社への投資を禁じる大統領令に署名したことから反落しています)。

さらに、中国政府が電気自動車への移行を促進する政策を示したことを受けて電気自動車関連が、また、11月11日の「独身の日」セールへの期待と実際に盛況に終わったことを受け、家電メーカーや顧客サービス関連も上昇しています。

中国の経済指標は予想を上回るものと下回るもの

中国の経済指標ですが、良い指標と悪い指標が出ています。10月のCaixin中国製造業PMIは53.6と、市場予想の52.8や前月の53.0を上回り、Caixin中国サービス業PMIも56.8と、市場予想の55.0や前月の54.8を上回りました。

また、10月の輸出は前年同期比11.4%増と市場予想の9.2%増や前月の9.9%増を大きく上回っています(ただし、輸入は4.7%増と、市場予想の8.6%増や前月の13.2%増を下回りました)。

一方、10月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.5%増(市場予想0.8%増、前月1.7%増)、生産者物価指数(PPI)は-2.1%(市場予想-1.9%、前月-2.1%)とどちらも市場予想を下回りました。

10月のマネーサプライ(M2)も10.5%増と、市場予想・前月実績の10.9%増よりも若干低く、新規人民元建て融資も6898億元と、市場予想の7750億元や前月実績の1兆8957億元よりも小さいものとなっています。

香港ハンセン指数は大幅上昇

一方、11月前半の香港ハンセン指数は大幅上昇となっています。中国本土株と比較して米国株の影響を受けやすいことに加え、米国の金利上昇に伴って世界中の金融株が上昇したことから、ハンセン指数で大きな構成割合を占めるAIA(01299)、HSBC(00005)、平安保険(02318)、中国工商銀行(01398)や中国建設銀行(00939)といった金融株が大きく上昇し、香港ハンセン指数の上昇をけん引しました。

また、コロナワクチン開発への期待から景気循環株が全般的に堅調に推移し、ここまで大きく売り込まれていた金沙中国(01928)などのマカオ関連も大きく上昇した他、長江和記実業(00001)などの香港地場のディベロッパー銘柄も大幅上昇となっています。

中国ITハイテク大手株は横ばいまたは軟調な動き

一方、テンセント(00700)やアリババ(09988)などこれまで株価が好調に推移してきたITハイテク大手の株価は、横ばいまたは軟調な動きとなっています。

米大統領選の結果、バイデン氏勝利、上院が共和党、下院が民主党と「ねじれ状態」になる可能性が高まりました。このことから、バイデン氏の掲げる増税や大手IT企業への規制強化の実現が難しくなるとの見方が強まり、11月初旬は米国でハイテク株が上昇。香港市場のITハイテク大手の株価もその恩恵を受けて上昇していました。

しかし、史上最大のIPOと目されていたアント・グループの上場が中国政府の意向で延期となり、アリババ(09988)が急落したことや、その後も中国政府がネット大手対象の独禁規制案を公表したことから軟調な動きが続いています。

アリババ(09988)は「独身の日」セールの取引高で記録更新をしましたが、株価への影響は限定的でした。

もっとも、テンセント(00700)はオンラインプラットフォームやフィンテック市場に対する中国当局の規制強化に協力する姿勢を示しており、これらのプラットフォーム企業の優位性は変わっていません。

したがって、今後さらに調整するところがあれば、そこはチャンスと見ることもできると思われます。