株価軟調の理由は金融株の下落
9月の上海総合指数は軟調に推移しています。株価が軟調な理由は時価総額の大きい金融株が全般的に下落していることです。2020年上半期の銀行の決算状況を見てみると、中国工商銀行など、四大国営銀行の中間決算はざっくりと10%程度の減益となっています。特に第2四半期(4-6月期)に限ると25%程度の大幅減益となっています。
減益になっている理由は新型コロナウイルス感染拡大の影響で不良債権が拡大するリスクが懸念される中、前倒しで減損処理や引当金の積み上げを行って特別損失が出ていることや、当局が中小企業や個人などを支援するために銀行に低利融資を要請したことから純金利マージン(NIM)が落ち込んでいることが挙げられます。
業績回復は2021年以降か
問題はこれが業績悪化のピークなのかどうかですが、コロナ禍を起因とする不良債権は下半期にさらに積み上がる可能性があり、少なくとも引当金はさらに計上される必要がありそうです。そのように考えると、業績の回復は2021年に入ってからとなる可能性もあると考えられます。
もっとも中国本土株でもアップルに部品を供給している立訊精密工業(002475)、歌爾(002241)、瀘州老窖(000568)や貴州茅台酒(600519)などの白酒関連など堅調な株価推移となっている銘柄もあります。
また、上海総合指数自体も50日移動平均線を株価が下に突き抜け、50日移動平均線が上値の抵抗線になってはいますが、上向きで推移している200日移動平均線より株価はかなり上に位置していますし、100日移動平均線でのリバウンドも期待できるところです。
また、中国本土市場は国慶節(10月1日)からの連休によって長期間休場となることから、連休前にポジション整理の売りが出たとも取れます(中国本土市場の取引は10月9日(金)から再開される予定です)。
中国の経済指標は予想以上の結果
足元で発表されている中国の経済指標は予想以上の結果となっています。
まず、8月の鉱工業生産は前年同月比5.6%増(市場予想5.1%増、7月実績4.8%増)、小売売上高は前年比0.5%増(市場予想0.0%増、7月実績1.1%減)、工業企業利益は前年同月比19.1%増(7月実績19.6%増)、9月の中国国家製造業PMIは51.5(市場予想51.3、8月実績51.0)、中国国家非製造業PMIは55.9(市場予想54.7、8月実績55.2)、Caixin中国製造業PMIは53.0(市場予想53.1、8月実績53.1)となっています。
特に製造業・サービス業景況感指数が景況感の境目である50を上回る推移が続いていることは今後の中国経済の回復を予想させるところです。そのように考えると、中国本土金融株の内容の良い企業で、株価が大きく下がっている企業は、まだ株価が下がる可能性も十分ありますが、近く買いのチャンスにもなり得ると思います。
香港ハンセン指数は大幅下落
一方、9月の香港ハンセン指数ですが、こちらは大幅下落となりました。株価は50日移動平均線、200日移動平均線よりも下に位置し、200日移動平均線も下向きで、下落トレンドが続いているところです。
香港ハンセン指数も、構成ウェートの大きい本土金融株の下落が効いている他、HSBC(00005)が世界の大手銀行に対して、約20年に渡り2兆ドルを超える不正な資金の送金を見過ごしていた疑いが発覚する中で25年来の安値を付けていることも響いています。
さらに「中国恒大集団(03333)の資金繰りが厳しい」というネット媒体の報道(これについて、中国恒大集団は「純然たる誹謗」「事業運営は引き続き安定的で健全だ。財務状態も安定している」として否定している)もあって、中国海外発展(00688)などの本土不動産株が下落していることも株価の重しとなっています。
その一方で、アリババ(09988)、美団点評(03690)などのニューエコノミー株は堅調な株価推移を続けています。
10月の香港ハンセン指数は中国本土の金融株や不動産株の影響で一段の下落となる可能性もありますが、前述のように、大きく下がったところは優良株の買いのチャンスになる可能性があると思います。
特に米国でナスダックが調整基調にあることもあって、株価好調な香港のニューエコノミー株が50日、100日、200日といった主要な移動平均線まで調整してくるところがあれば注目しても良いのではないでしょうか。