上海総合指数は米中対立を懸念し調整
7月下旬の中国株ですが、上海総合指数は調整気味の株価推移となっています。まず、中国政府系の中国証券報が株価の急騰に対して、投資家にリスク管理や、理性的で長期的な投資を呼び掛けたことや、中国証券当局が違法な証拠金融資プラットフォームを調査したことなどから、特に7月16日(木)に株価は大きく下げました。
その後、株価は反発していたのですが、7月24日(金)に再度大きく下落しました。この下落した理由ですが、ポンペオ米国務長官が中国指導者について世界的覇権を目指す暴君と位置付け習近平政権を厳しく批判したことや、米国がヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を決めたことに対する報復措置として、中国当局が成都の米総領事館の閉鎖を命じたことなどから米中関係悪化への懸念が高まったことによります。
今後の上海総合指数は経済回復により穏やかな上昇予想
その一方で、中国の経済指標は堅調なものとなっています。7月16日に発表された第2四半期のGDPは前年比3.2%増と、市場予想の2.4%増や第1四半期の6.8%減を上回りました。また、同日に発表された6月の鉱工業生産も4.8%増と、市場予想通りとなり5月の4.4%増を上回りました。小売売上高も1.8%減と市場予想の0.5%増よりは下回りましたが、5月実績の2.8%減よりは改善しています。その他、6月の中国の新車販売台数は5月の前年同月比14.5%増からやや減速したものの前年同月比11.6%増の230万台となり、強い勢いを保っています。
また、企業業績にしても、サンズ・チャイナ(01928)4-6月期決算が赤字に転じるなど、新型コロナウイルスの影響を受けて業績が悪い企業はあるものの、大手建機メーカーの中聯重科(01157)が上半期の業績について、インフラ投資の拡大などから純利益が前年同月比で48~63%増になると予想するなど政策の効果も現れているところです。
今後の上海総合指数については緩やかな上昇となることを予想しています。経済が良くなってきていることと、トランプ米政権は選挙が近づいてきたことで、本当の意味で厳しい対中政策を採れないと予想するからです。もちろん急騰は中国政府が抑制しますので、様子をうかがいながらの緩やかな上昇になると考えます。
香港ハンセン指数は上海総合指数よりも弱い動き
一方で香港ハンセン指数は上海総合指数よりも弱い動きとなっています。上海総合指数は調整したとはいっても50日移動平均線や200日移動平均線よりも株価は上方に位置し、200日移動平均線を50日移動平均線が上回っているゴールデンクロスとなっているのに対し、香港ハンセン指数は丁度200日移動平均線が抵抗線になっているような感じで株価が下落し、50日移動平均線まで下がってきたところです。
これは中国の「香港国家安全維持法」に対して、米国が香港の優遇措置を撤廃するとしたことから、ドルペッグ維持への懸念などによって香港からの資金逃避が起こっていることや香港で新型コロナウイルスの感染者が急増しており、行動制限が再開される可能性があるとの見方によるものです。
もっとも、香港ハンセン指数や中国の本土金融株などは弱い推移ですが、テンセント(00700)やアリババ(09988)、ネットイース(09999)、美団点評(03690)、小米(01810)といった大手ネット関連銘柄の株価は強い株価推移が続いています。これは米国でNYダウよりもナスダックが強い推移となっているのと似ています。
大手ネット企業の場合、新型コロナウイルスによって業績への悪影響を受けにくいという見通しから資金が集まっているのです。その他、平安健康医療科技(01833)や阿里健康(00241)などの関連銘柄、雅生活服務(03319)や碧桂園服務(06098)などの不動産管理銘柄、あるいは香港交易所(00388)なども堅調な推移となっています。これらもやはり新型コロナウイルスによる悪影響を受けにくいという点と、香港交易所(00388)については続々と続く米国に上場している大型株の香港セカンダリー上場などによって売買が活発化するのではないかという思惑から買われている様子です。
このあたりは、香港の国際金融ハブとしての地位も危ぶまれるとの声もある一方で、そうした結果には絶対にさせないという中国共産党の意思が感じられ、香港の金融市場をバックアップするような動きを見せていることも関係していると思います。
このように考えると、香港市場が長期的に厳しい状況になり続ける可能性は低いと思われ、中国株全体が調整したときに前述のハイテク株などの株価が下がったところは投資を検討するチャンスなのではないかと考えます。