今回は改めて米ドル/円相場の長期変遷から確認していきましょう。

【図表1】
出所:筆者作成(2020年7月21日)

米ドル/円相場はまず「2011年安値をどうとらえるか」、また「2015年6月高値、2016年6月安値をどうとらえるか」が非常に大事なポイントとなります。

2011年11月安値に至る過程では1995年4月安値79.750円を割り込み、長期的な下げ三波動を明確化したかに見えました。

多くの高値起点での下げ計算値は67円台、57円台に集中し、下げ時間も余す状態でつけた2011年10月安値は三波動構成上、底値としての妥当性はありませんでした。

しかしながら2012年11月の月足均衡表好転(転換線が基準線を上回る)からの上昇によって2011年10月安値は、大底としての妥当性を強調するものになっていたことは非常に大事です。

2012年11月は80円水準に到達した2010年10月から基本数値26ヶ月目であると同時に、2002年1月高値からの下げ三波動構成の最大時間66ヶ月、66ヶ月の時間関係になっています。

1995年の安値割れからのモミアイ相場を26ヶ月演じての上昇であるだけに、1995年安値割れは綾にすぎず、2011年安値の妥当性を考えてもよくなったのが、2012年11月からの上昇となります。

2012年11月のチャートは週足、日足共にやはり80円水準が大事であり、日足、週足、月足が同時に好転したことも非常に重要です。

さて、2011年安値からの上昇では2015年6月高値まで、常に下落時間よりも短い時間で下げ過程からの高値を上抜いてきていたことがわかります。

2015年6月までの上昇過程も三波動の時間内に計算値を達成するものであり、2015年6月は高値決まりとなっているものの、直ちに相場を崩していないことが判るでしょう。

2007年からの下落数53ヶ月に対する2011年安値から53ヶ月目2016年2月から大きく相場を崩すことになりました。しかし2011年11月安値と同様、直ちに底打ち、天井打ちを証明できぬケースがあることもご理解ください。

2016年6月安値までの下落では2005年1月安値を割り込むことになったものの、以降2015年高値と2016年安値の間での騰落を現在まで続けてきていることになります。

2016年安値までを第二波動とする上げ三波動構成では57ヶ月、57ヶ月の2021年7月を残すのみ、現在位置からの上昇であってもこの時間までに2015年高値を上抜くことは困難であり、2011年安値からの上昇波動継続の可能性は既に考慮すべき問題ではなくなってしまっています。

また2016年安値を起点とする上げ三波動構成もまた第一波動125日(2016年6月安値から12月高値まで)に対し、2020年3月安値から125日目8月28日が変化日としてありますが、現在位置からの上昇で2016年高値を上抜くこともまた現実的なものではありません。

これら上げ三波動構成の変化日は注視すべきではあるものの、所詮は中間波動の範疇に含まれざるを得ないということです。

逆に下げ三波動構成の場合はどうでしょうか。
2016年12月高値からの下げ三波動構成では2016年12月高値を中心として18ヶ月、18ヶ月の時間関係は既に2018年7月に経過しています。

2015年高値以降高値を切り下げ続けている状況であり2016年12月起点、2018年10月起点の下げ三波動構成の影響力を考えることになりますが、2020年7月23日まで多くの時間が経過してきています。

【図表2】
出所:筆者作成(2020年7月21日)
【図表3】
出所:筆者作成(2020年7月21日)

直近では6月23日、7月15日が安値決まりとなっており、わずかながら安値を切り上げています。 (もっとも2020年3月24日、6月5日は重要変化日での高値決まりの切り下げ)

重要変化日7月23日を控えどちらに動くかが非常に大事なことがわかりますが、図のように2018年10月高値を起点とする下げ三波動の時間は7月15日を経過してもなお、充分残っていることは意識しておかねばなりません。

上昇三波動の時間は限定的、下げ三波動の時間は充分残っているだけでなく、これまで述べてきた3つの相場水準
(1)2019年5月31日実線と交わる遅行スパン108.483
(2)2019年1月3日終値107.657
(3)2019年6月25日安値106.778

のうち(3)すれすれの位置にあるということは上昇では(2)、(1)水準も三波動の定型とは別にネックとなってしまう状況にあり、(3)水準は月足転換線、週足基準線水準でもあるだけに下落では下げ幅が出かねないということなります。

ここまで6月23日、7月15日と日足均衡表の受動的下落に即して下げたものの下落がそれぞれ限定的で安値を切り上げてきていることは評価できるものの、7月23日以降の下落で(3)水準を割ってくることはやはり下げを明確化してしまいます。この点のみ、当面は特にご注意ください。

※本文ならびにチャートの時間軸は取引日で作成しています。