7月上旬の中国株ですが、上海総合指数は大きく上昇し、一時3,450ポイントを回復しました。一方、香港ハンセン指数も小幅に上昇したのですが、こちらは200日移動平均線前後から騰がりきれない様子です。

FTSE社の中国株指数へのA株組入れ比率の引き上げ

中国本土株が大きく上昇した理由は4つあります。1つは世界のファンドが参考にする株価指数を作る英国のFTSE社が、6月19日より中国株指数へのA株組入れ比率を17.5%から25%へと大きく引き上げたことです。これにより、中国本土A株へのファンドからの資金流入が促されました。

米中対立の落ち着き

2つ目の理由は、香港国家安全法制定に対する米国の中国への制裁措置が予想ほどではなかったことです。全人代常務委員会は6月30日、香港国家安全維持法草案を可決、即日発効しました。香港国家安全法は政権転覆、国家分裂、テロ活動、外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為などを罰する法律ですが、一国二制度を維持するといった香港返還前に交わされた約束に反するとして、特に米国から強い反発があるとみられました。

ところが、米国は今、黒人への人種差別に関するデモや新型コロナウイルスの感染再拡大などの問題を抱えています。ここで下手に中国を刺激して経済的にお互いがダメージを伴うような状態になったり、中国が米国からの農産物輸入を抑制する可能性が出てきたりすると、11月の米大統領選挙にどうしても影響を及ぼしてしまいます。

これらのことから、米国が発表した中国への制裁は対中関税の強化といったような厳しいものではなく、あまりインパクトの大きくない内容でした。これによってこの問題による影響はピークに達したとの安心感が広がり、株価の上昇に繋がっているというわけです。

経済指標は好調、ただし中国当局はバブル的な株価上昇に警告

3つ目の理由は中国の経済指標が堅調なことです。6月30日に発表された6月の中国製造業購買担当者景気指数(財新製造業PMI)は50.9となり、市場予想の50.5や5月実績の50.6を上回り、景況感の境目である50も上回りました。

同じく中国国家非製造業PMIは54.4と、こちらも市場予想の53.6や5月実績の53.6を上回っています。国家が調べたPMIだけでなく、民間が調べたPMIも堅調です。7月1日に発表された6月のCaixin中国製造業PMIは50.9と、市場予想の50.5や5月実績の50.7を上回りましたし、7月3日に発表されたCaixin中国サービス業PMIも58.4と、市場予想の53.2や5月実績の55.0を上回り、かなり好調な数字となりました。

そのほか、中国国家統計局が6月28日に発表した統計によると、5月単月の税引き前利益は前年同月比6.0%増の5823億4000万元となり、2020年に入ってから初めてプラス成長に転じました。4月は4.3%減だったことを考えると、明らかに経済は回復基調に向かっていると言えそうです。

4つめの理由は7月6日に政府系の中国証券報が「健全な強気相場を促すことは、これまで以上に重要になっている」など、株高を支持する論説を展開したことがあります。中国政府の意向は中国本土株に大きな影響を及ぼします。ただし、こちらについて中国政府はバブル的な株価上昇は防ごうとしており、7月6日の論説から大幅高となった市場に対し、中国証券報は7月9日付で投資家にリスク管理や理性的かつ長期的な投資を呼びかけています。

さらに中国証券当局は7月8日遅く、258の違法な証拠金融資プラットフォーム(いわゆる場外配資本(=ノンバンクが投資家に株式取引用の資金を貸し出すこと)のリストを公表しました。

中国当局の狙い

また、政府系の2つの基金が株式の保有を減らすとも発表しています。では、中国当局の意向によって中国本土株は今後急落するかというと、そうではないと考えます。中国当局が目指しているのは株価を下落させることではなく、米国株のような息の長い上昇相場を作り出すことです。

したがって、しばらくは国内投資家が当局の様子を伺いながら、相場自体は緩やかな様子見の上昇が続くのではないかと予想されるところです。