ストラテジックキャピタルの提案はすべて否決
京阪神ビルディング(8818)
株主総会のシーズンが本格化しています。これまで取り上げてきたような株主提案が諮られるものもでてきています。たとえば、ストラテジックキャピタルが株主提案を行っていた京阪神ビルディング(8818)の株主総会は6月16日(火)に実施されました。京阪神ビルディングが開示している臨時報告書によれば、会社提案の議案はすべて90%以上の賛成率で可決され、ストラテジックキャピタルが提案したものも含めすべて否決されました。ストラテジックキャピタルの代表である丸木強氏を社外取締役に専任するという議案こそ賛成率が20%を超えましたが、その他の議案はほぼ90%が反対で、株主側は結果だけ見ると大敗と言えるでしょう。
蝶理(8014)
同じくストラテジックキャピタルの提案先で蝶理(8014)も6月16日(火)に株主総会を行っており、こちらも株主提案は賛成率が非常に低い中ですべて否決されています。その他にもここまでいわゆるアクティビストの株主提案が可決された例は出ていないようです。
興味深い株主提案:三菱倉庫(9301)とテレビ朝日(9409)
三菱倉庫(9301)
一方、株主総会シーズンが近づくに連れ、興味深い株主提案も出てきています。まず、注目したいのはオアシス・マネジメントが株主提案を行っている三菱倉庫(9301)です。オアシスは同社に自己株式の取得、取締役の選任、ガバナンスの変更を求めており、会社側はそれにすべて反対するという発表を行っていました。しかし、株主の議決権行使を助言する会社で世界有数のInstitutional Shareholder Services(ISS)がオアシス案に賛成を推奨していることが判明し、三菱倉庫側が6月16日に株主提案への補足説明を発表しています。
ISSは特に機関投資家などの議決権行使に強い影響力を持つとされており、その客観性もあって三菱倉庫としても追加の説明が必要と判断したものかと思います。三菱倉庫は自社株取得等について補足すると同時にROEの5%目標を明言するなど、オアシス提案に歩み寄っているように見えます。三菱倉庫の補足説明はこちらをご覧ください。
テレビ朝日(9409)
また、RMBキャピタルがテレビ朝日(9409)に行った提案も注目に値するように思います。RMBは三陽商会(8011)など日本で比較的存在感のある米国系のアクティビストです。RMBはテレ朝に対し、「無料の地上波放送を中心とした事業モデルを変革すべき」、「地方系列ネットワーク局の位置づけを再考すべき」「東映グループとの事業シナジー」を更に追求すべき、など事業内容に対するかなり踏み込んだ提案を行っています。なお、この提案は株主提案ではなく、株主提案は「自己株式の取得」で、その上でこういう戦略を進めるべきであるという「提案」を行っているという形です。
テレ朝が地上波放送に固執せず、インターネットやコンテンツ作成に移行すべきというのはAbemaへの出資を決めるなど他ならぬテレ朝自体も考えているところでしょう。(ちなみにマネックス証券のウェブサイトではAbema・アベマというキーワードでサイバーエージェント(4751)とテレ朝が表示されるなどキーワード検索に注力しています)
テレ朝は東映(9605)と株を持ち合っており、テレ朝が東映株を11.3%持つ一方、東映がテレ朝株を15.3%保有しています。テレ朝のPBRが0.5倍で時価総額1760億円と低迷する一方、東映のPBRは0.9倍と満足な水準とは言えないものの、時価総額は2160億円と一時は2倍を超えていたテレ朝の時価総額と逆転しています。
東映はコンテンツプロバイダーとしてこういう評価を得ていると思われます。テレ朝も豊富なコンテンツやコンテンツ作成力を有しており、放送権で稼いでいる会社とみなされるのは本意ではないように思います。事実、テレ朝はすべての価値の源泉をコンテンツとする戦略を進めており、その戦略説明資料では「テレビ広告費は構造的低迷!」とし、「インターネット広告費が地上波テレビ広告費を逆転!」としているのです。
そう考えると、RMBの提案はややラディカルな面はあるもののテレ朝の進みたい方向と大きくは変わらないように思います。一方で、会社が望んだとしても変化は簡単ではなく、様々な抵抗はありうるでしょう。その際に、テレ朝株の1%以上を有している株主であるRMBがこういう後押しをしてくれるのは、同社にとっても実は望むものとなるのかも知れません。
来週の注目は、JR九州(9142)の株主総会
過去にとりあげたJR九州(9142)(※)の株主総会も来週23日(火)で議決権は前日17時30分まで受け付けているとのことです。引き続き株主総会にご注目いただき、ぜひ週末間に合う会社には議決権行使をご検討ください。
(※)過去掲載記事