新型コロナウイルスがもたらしたものに、実体経済と乖離した株式市場の「コロナバブル」がありますが、もう一つ、先週の日経新聞でも報じられた「金利の死」と呼ばれる現象は注目すべき点です。

金利は本来、経済において重要なもの

20年以上続く超低金利の中、金利をほとんど意識しない方が多いかもしれません。しかし、金利の役割は本来、経済の中でとても重要なものです。

債券市場はもとより、株式市場も為替市場にも大きく影響を及ぼし、中央銀行の政策でも最も有効な手段でした。景気の低迷期において、金融緩和と言えば金利の引き下げが定番でしたが、バブル崩壊以降、金利を下げようにも下げる余地のないレベルに停滞することになりました。(ゼロ金利政策自体は何度か解除されたものの、利上げらしい利上げがほとんどできないまま現在に至っています。)

2016年にはついにマイナス金利政策となり、日本のみならず、世界の主要国もゼロ金利、マイナス金利という超超低金利状況です。ご存知の通り、米国は段階的に利上げを重ねたものの、今回の新型コロナウイルスの影響で再びゼロ金利になりました。

世界の金利が機能しなくなっている

世界の主要市場において、まともに金利政策を採れるところがない状況で、新型コロナウイルスによる実体経済への大打撃が起こりました。もちろん金融政策は金利操作だけでなく、これまでも各中央銀行は量的緩和をはじめとする様々な景気刺激策を採ってきました。今後も大規模な金融緩和策が予定されています。

前述の日経新聞の記事の中に元日銀総裁の福井俊彦氏の言葉として、「1%というのは、金利機能が働く最低レベルの金利」とありました。1%を大きく下回ったままの世界の金利は経済を働かせる上で全く機能しなくなっている、すなわち「金利の死」ということです。経済に大きなひずみが生じている今、それは投資をしていく上でも大きな障害です。

「金利の死」で見直すべき投資ポイント

これまでは、各国に金利差があることにより、FX投資も外国債券投資も魅力が高まっていたものです。金利差による利息収入=フィクストインカムは、比較的安全性の高い投資です。資産のアロケーションは年齢やライフイベントの時期や予算によっても変わりますが、そうした「安全資産」は様々なタイプの投資家にとって重要な役割を担ってきました。

しかし、主要国が「金利の死」に陥っている状況下では、リスクが低い高格付けの債券投資では超低金利にもとづく利息収入に甘んじる必要があり、必要な予定利回りを確保するためにはリスクの高い投資の配分を増やす必要が出てきます。

そこで、次の2つのポイントを意識することが大事です。
・    資産トータルから期待できる予定利回りを目標とする資産配分を意識する
・    資産全体でのリスク度合い・比率を意識する

これは通常の投資でも重要なポイントですが、期待利回りの計算要因、資産のリスク要因の変化を認識してアロケーションの見直しをすることも必要になってきます。

利回りを高めることばかりを意識すると、株式投資比率を高めてしまいますし、債券投資では低格付けのジャンク債を選ぶようなことになると、資産全体のリスクがぐっと高まってしまいますので気をつけましょう。