1990年は「よい円安」、今は「悪い円安」=160円
米ドル/円は1990年以来、約34年ぶりの1米ドル=160円まで上昇した。ただ、同じ160円でも、例えば過去5年の平均値である5年MAとの関係で見ると、1990年は5年MAがそもそも160円程度だったのに対し、今では5年MAより大幅に米ドル高・円安になっている(図表1参照)。
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米ドル/円の5年MAかい離率を見ると、1980年代後半にはマイナス40%程度まで拡大していた(図表2参照)。つまり、5年MAから見ると、極端に行き過ぎた米ドル安・円高となっていた。これは、当時の大きな政治経済の課題に日米の貿易不均衡是正があり、そのために米ドル安・円高への為替調整が行われた影響があった。この結果、「行き過ぎた米ドル安・円高」が起こり、その修正が1990年160円への回帰だった。当時の160円は「行き過ぎた円高」の修正ということで、相対的には「よい円安」の評価が多かった。
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これに対して足元で160円を目指す動きは、5年MAを3割程度米ドル/円が上回るものだ。経験的にこれは、「行き過ぎた米ドル高・円安」の可能性を示している。「行き過ぎた円安」という意味では、1990年の160円とは異なり、「悪い円安」と感じる人が多くなっているだろう。
消費者物価基準の購買力平価でみると、今の160円は「弱い円」の印象が強い
次に日米消費者物価基準の購買力平価との関係を見て見よう。1990年の160円は、購買力平価より大幅な米ドル安・円高だった。これに対して、足元の160円は全く逆で、購買力平価より大幅な米ドル高・円安になっている(図表3参照)。
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これを購買力平価からの実勢レートのかい離率で見て見ると、1990年の160円は購買力平価から3割以上米ドル安・円高だったのに対し、足元では逆に3割以上の米ドル高・円安になっている(図表4参照)。以上からすると、1990年の160円は、消費者物価から見ると「強い円」の印象だったのに対し、今の160円は「弱い円」の印象が強いというほとんど正反対といっても良さそうな評価になっているのではないか。
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