資産形成と資産運用は違う!

午後のホテルのティーラウンジ、お友達に「ねえ、資産形成って何?資産運用とどう違うの?」と聞かれて、答えられるといいですね。実は、意外に多くの方が、この違いをしっかり説明できないように思います。この違いを知っていると資産形成についてしっかり対策が作れるものなのです。

簡単に言えば、資産形成というのは、文字をそのまま読んで資産を作り上げること、となります。お金との向き合い方で言えば、「目標」とか「目的」といえるでしょう。一方、資産運用は資産形成をするための「手段」です。「目標」である資産形成には「手段」としての資産運用があったり、貯蓄があったりすると考えてください。極端な言い方をすれば、貯蓄だけ、銀行預金だけを使って、お給料のなかから毎月しっかりと貯めていくことでも十分、資産形成という目標を目指していることになります。

ただし、そのスピードが遅いのが問題です。預貯金の金利が7%もあった時代には、銀行預金も資産形成の有力な選択肢だったのですが、今ではそんなことは期待できません。だからこそ、株式や投資信託などを使った資産運用が「手段」として必要になっているのです。

資産形成のリスクと資産運用のリスク

とはいえ、「資産運用にはリスクがあるから」と最初の一歩を踏み出せない人も多いはずです。確かにリスクはあります。でもそのリスクの意味を皆さんは十分に理解したうえで避けようとしているのでしょうか。

具体的な数字を使って考えてみましょう。今から20年後の65歳までに退職後の生活費用として2000万円を積み立てるという「目標」を立てたとします。資産形成という「目標」です。これを金利0%の銀行預金という「手段」を使って作ろうとすると、毎年100万円、月額8.3万円強を積み立てなければなりません。「とても毎月こんなに多くの資金を積み建てられない。月5万円が精いっぱい」と考える人には、この目標は達成できませんから、「資産形成のリスク」は100%といえます。月5万円の貯蓄なら、20年で1200万円にしかなりません。

ではその5万円を、投資信託を使って毎月積み立て投資で資産形成を行うとします。どんな金融商品を使うかにもよりますが、例えば50%の確率で年率5%の運用収益率が見込めるとすると、20年後には2064万円になる計算です。この投資信託を使った場合の「資産形成」という目標の達成度は50%といえます。

もちろんこれは計算上の比較になりますが、知っておきたいことは資産運用という「手段」の持っているリスクを考えるのではなく、資産形成という「目標」の“達成可能性”を基準にすべきだということです。銀行預金には「手段」としての投資のリスクはほとんどありません。でも資産形成という「目標」を達成する確率は低いという場合があるということを、覚えておいてください。

資産形成を行うリスクと資産形成を行わないリスク

それでも資産形成にはリスクがあるからと二の足を踏んでいる方には、資産形成を行わないリスクについても考えて欲しいと思います。資産形成を行わなければ、最も体が衰えている最晩年になって、資産が枯渇しかねないリスクを抱えているのです。このことは第1回目のコラムでしっかり説明しましたので、もう一度読み直してみてください。

資産形成を行わないで「超高齢女子社会」を迎えると、最晩年に資産が枯渇してしまいかねません。またその段階に至ってからでは何ら対策をとることはできません。最後は子どもに頼ることになってしまいます。誰もそんな解決策は望んでいませんし、受け容れたくないと思っているはずです。

それに対して、資産形成を行うリスクはコントロールできるものです。資産運用という手段が持っているリスクを長期投資、分散投資、時間分散といった方法で抑制し、コントロールするのです。

どちらかを選ぶとしたら、皆さんはどうしますか?「資産形成をしないリスク」は自分でコントロールできないものですが、「資産形成のリスク」は自分でかなりコントロールすることができます。コントロールできるリスクとコントロールできないリスクのどちらかを選ぶとしたら、あなたはどうしますか?

リスクはあるもののそれをコントロールできるのであれば、「資産形成をする」と改めて腹をくくってみましょう。今やNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税で資産形成ができる手段が揃ってきました。是非、資産形成に一歩を踏み出して欲しいと思います。そのためにも『資産形成をゼッタイ始めると思える本』(扶桑社)を読んでみてください。

次回は最終回として「投資の極意、最低限おさえるべき3つのルール」を伝授したいと思います。