投資で儲ける方法は何だと思いますか。答えは簡単。安く買って、高く売ることです。これはどんな時代でも、どこの国でも同じです。でも、いつが安いのか、いつが高いのか、これがわからないので言うほど簡単ではありません。しかも値下がりするときには「まだ下がりそうだから待ってみよう」、値上がりしているときには「まだ上がりそうだから待ってみよう」という気持ちがあって、心理的な障害も多いものです。
ルール1:安く買うための極意
しかし、簡単なルールを決めることでこの投資の極意を自分の資産形成にうまく取り込むことができます。まずは「安く買う」方法です。これには、時間と数量を加えて考えます。まずは時間。「安く買う」を「安い時に買って、高くなったら買わない」と読み替えます。さらに、数量も( )に入れて考えてみます。そうすると「安くなったら(たくさん)買って、高くなったら(少ししか)買わない」となります。( )中の言葉を加えると、定期的にいつも買うけど、値段に応じて買う数量を変化させるということが、この極意につながることがわかります。
投資からちょっと離れて、トイレットペーパーで考えてみてください。毎回1000円でトイレットペーパーを買うと決めます。そうすると「(1パックが)200円になったら5個買う、250円に上がったら4個しか買わない」ということと同じです。「一定の金額」で買うということは、「安く買う」ことを具体化する方法なのです。
ここまでくると、このルールは定額積立投資のことだとわかりますね。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを使って非課税で毎月決まった金額の積立投資をすることが増えてきました。これは実は「安く買う」ための極意を実践できるいい方法です。
ルール2:売ることを考えるのは20年、30年先
2つ目のルールは、高く売る方法です。投資で成功するためには「安く買う」だけではだめで、それを「高く売る」ことが必要です。これもなかなか難しいのですが、これも「高いときに売って、安くなったら売らない」と、時間を考慮して考えてみましょう。さらに数量も考えると、「高いときに(たくさん)売って、安いときに(少ししか)売らない」と考えれば良いことがわかります。
それを具体的に実行する方法が、定率引き出しです。例えば、持っている資産の4%を引き出すとします。持っている資産の価格が上昇して、資産残高が4000万円になった時は、引き出し額は4000万円×4%で、年間160万円となります。もし価格が下落して、持っている資産が3000万円になったときには4%の引き出しは120万円になり、「120万円しか売らない」ことができます。
ただ、ここでしっかり抑えておくべきことは、資産形成をしている期間はまだ「売る」時ではないということです。今日、明日、明後日の株価が気になる人も多いと思いますが、それは“今売ると、損をするか儲かるか”を考えるからです。価格の変動で資産の総額を評価するとき、すなわち売却することを考えるときは退職してからですから、20年後、30年後です。今はずっと「金融資産を買う時期」だと思い続けることが重要です。現役で働いている方なら、「売る時の極意」はその存在を知っていればそれで充分です。
ルール3:「卵は一つのカゴに盛るな」
20年、30年の積立投資を続けるなら、投資対象は安心できるものでなければなりません。そのために資産は十分に分散されていることが必要になります。「ポートフォリオ(資産を分けて配分する)」という考え方です。そこには3つ目のルールとして、「卵」をよく理解することを挙げておきたいと思います。
資産運用のセミナーなどで、分散投資を説明する際に、しばしば「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言が使われます。ご存じですか。「9個の卵を一つのカゴに入れておくと、万一落としてしまったらすべて割れてしまう。でも3つのカゴに分けておけばひとつを落としても、残り6個は無事」という例えを使って、お金(卵)を複数のカゴ(資産)で運用することを伝えています。
ですが、考えてみると9個割れても、3個割れても、投資では損は損だと思いませんか。私は、このことわざについて十分理解されていないと気になっています。割れなかった6個の卵が孵って雛になり、成長して親鳥になって、また卵を産むというプロセスがあれば残った卵が利益を生み出す、というところまで考えるべきだと思っています。つまり、卵が雛になり親鳥になる時間が必要なのです。そう、この格言には長期投資も大切なものだというメッセージが含まれているのです。こう考えると、分散投資と長期投資が不可分であることがわかります。
ところで卵には、「収益を生む力」が求められます。では、卵が銀行の預貯金だったらどうでしょうか。銀行預金は安全だと言われますが、預金金利が0.01%の昨今、投資する元本が2倍になる、すなわち100万円を200万円にするには7200年かかります。これでは「無精卵」と言っていいでしょう。一方、収益率が年率3%の商品の場合は、24年で元本が2倍になります。資産形成の時間としてはちょうどいいと思いませんか。
最後に、この3つのルールの共通点を紹介しておきます。この3つとも最初に少し考える必要はありますが、一度決めればあとは放っておけるルールです。すなわち放っておく力、「放念力」が求められます。