初心者が投資を始めるにあたっての注意点やアドバイスをマネクリ編集部が投資のプロにたずねました。今回は、初心者が株を始める際の心構えや中国株への投資についてグローバルリンクアドバイザーズ代表取締役社長の戸松 信博氏にQ&A形式で回答してもらいました。

このコロナショックのタイミングで初心者が投資を始める場合に、注意しておいたほうがよい点や心構えがあれば教えてください。

コロナウイルスの影響で株価が下がっている今の状況は、株を始めるのにちょうどよいと思います。ただ、注意していただきたい点がひとつ。「株価は思わぬ方向に大きく動くことがままあるので、無理をしない範囲で投資を行うようにしてください」ということです。

2020年4月28日現在は、3月20日前後を底として世界的に株価は反発基調にあります。これは米国を中心とした世界の主要国が大規模な金融緩和や財政政策を打ち出していることが要因です。特に米国の中央銀行であるFRBはかつてないほどの大規模な量的緩和(お金の流れをよくして景気をよくするために市中銀行に資金を供給すること)を行っており、トランプ大統領も大規模な景気刺激策を実行しています。

金融政策と財政政策をセットで行うとかなりの効果が見込めることは金融危機後の株価の上昇でも明らかですし、実際、それを期待して現在株価が上がっているところです。コロナウイルスの影響がなくなった後はバブル気味に株価が上昇する可能性もあるでしょう。

その一方で、先進国でコロナウイルスによる経済への悪影響はこれから当分出てくるでしょう。コロナウイルス感染拡大の第二波がくる可能性もあります。また、コロナウイルスの影響で需要が減退し、原油価格が大きく下がっている点や北朝鮮の地政学リスクなども短期的な株価の悪材料となる可能性も否定できません。ほかにも、毎年5月~10月の6ヶ月間は、株価が調整しやすい6ヶ月であるというアノマリー(合理的な説明はできないものの、そうなりやすい現象)もあります。

したがって、株価はこのままV字回復とはならず、もう一度下げる可能性もあると考えられます。そのため、株価が高いところを無理に買っていくというよりは、下がったところがあれば少しずつ拾っていくスタンスの方がよいように思います。

ご自身が初めて投資を始めた時期はどんな状況でしたか。

投資を始めたのは1995年ごろです。私はちょっと変わっていて、日本株ではなく、当時はまだあまり知られていなかった中国株から投資を始めました。

当時、まだ中国株は限られた証券会社でしか扱われておらず、興味がある人もほとんどいない状態で、株価は非常に割安でした。そこをコツコツと買っていました。

結果として、その後の中国経済の成長とともに株価も上昇したので、タイミングはよかったと思います。あまり多くの人が株を買わないときに株を買って、多くの人が株を買いたくなるタイミングで売却するのが株で成功する秘訣だと思います。

過去にご経験された暴落相場ではどのような対処をしましたか。

一番記憶に残っているのは2000年のインターネットバブルの時です。当時はインターネット企業というだけでPERが1000倍など、ものすごく高い株価をつける銘柄がたくさんありました。その後、インターネットバブル崩壊のあおりを受けて、大きく損失を出してしまいました。でも、私はこの経験が無駄だったとは思っていません。

もちろん、損失は出ないほうがいいです。しかし実際に損失を出してもそこから学べることはたくさんあると思っています。損失を出した経験はあとになって生きてくると思いますから、一度の損失で落ち込みすぎず「次はどうすればよいだろうか」と次の手を考えることが大切だと思います。

株式について、これから初心者が中国株式投資を始めるならどのようなもの(業種や方法など)がよいと思いますか。

王道でいくなら、ハイリスクハイリターンの小型成長株を狙うよりも、テンセント(00700)やアリババ(09988)や美団点評(03690)に代表される大手プラットフォーム企業や、平安保険(02318)やニューオリエンタルエデュケーション(米国ニューヨーク市場に上場している中国企業、EDU)などの成長力がある大型株を中心として長期投資を行っていくとよいと思います。

これらの企業の中にはすでに時価総額ベースで世界トップ50社の中に入るほど時価総額が大きな企業もあります。中国自体が成長を続けているので、今後さらなる成長が期待できるのと同時に、市場シェアなど、他社が追随できない強みを持っている銘柄といえるでしょう。

初心者が投資対象を考えるにあたって、何を重視するべきだと考えますか。また、そう考える理由を教えてください。

一言で言えば、その企業にしかない強みを持っている企業に投資をするべきと思います。わかりやすいところでは、世界時価総額トップ10に出てくるような企業でしょうか。米国株では、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)など、中国株で言えば前述にもあるテンセント(00700)やアリババ(09988)です。

これらの企業の強みは、高い時価総額を利用し、株式交換や調達資金によって何百社というイノベーティブなハイテク企業の買収を行い自社の成長エンジンにできる点です。また、年間数千億円もの株式報酬を従業員に渡すことで、優秀なハイテク人材を、現金を動かさずに自社に集め、留まらせることもできます。

さらに、これらの企業は株価を上げる資本政策(増配や自社株買い、一株利益やROEの向上)を実施し、そして実現した株高を利用して買収と多額の株式報酬を行い、さらなる事業拡大に繋げていっているのです。

投資初心者に「今、してはいけないこと」をアドバイスするとしたら?

冒頭にも述べましたが、やはり無理をしないことでしょうか。あくまでも余裕資金で投資を行った方がよいと思います。

大きな資金で株を買ったものの思わぬ急落で大きな含み損を出してしまい、夜も寝られない状況になってしまっては元も子もありません。そのような状態になると、恐怖心からとんでもない安値で売却してしまうことにもつながりかねません。株価が下がって含み損を抱えてしまったとしてもそれほど気にならない範疇での投資を行ったほうが、精神的な余裕が出て上手くいきやすいように思います。

その他、初心者投資家へのエールがありましたらお願いします。

私が株式投資を始めた初期に読んでいたのは故・邱永漢先生の書かれた何百冊もの本でした。あるとき、セミナーで邱永漢先生に著書にサインをもらったときに書かれていた「株の儲けは我慢料」という言葉が印象に残っています。

株式投資は思い通りにならないことがしょっちゅう起こります。邱永漢先生の本の中にも『損して覚える株式投資』という本があるように、株式投資をしていると損を出してしまうこともあると思います。

しかし、そこで投げ出すのではなく、なぜ失敗したかを考えて、次の投資に活かす工夫をするようにしてみてください。そうして色々な経験をしていくうちに知見が溜まり、自分に合った投資のやり方が見えてくると思います。