2020年年始から中東の緊張などを背景にボラティリティが高くなった株式市場は、中国の景気刺激策や欧米の感染者数が少なかったことから2月の最終週まで大きな株価への影響はなかった。2月最終週からは感染者の増加が意識され世界的な株価の調整が始まった。

コロナウイルスの感染拡大による景気や企業業績の悪化が懸念の高まりを背景に、FRB(米連邦準備制度理事会)は月半ばのFOMC(米連邦公開市場委員会)を待たず3月3日に0.5%の緊急利下げを行った。その後も株価は下げ止まらず、債券価格は急上昇、足元も投資家のリスク回避が続いていたなか、日本時間3月16日の早朝に1.0%の緊急利下げを行った。

日本株は2月の高値からの下落率は約30%を超えており、これはアベノミクス開始以降一番大きな下落となった。急激な円高や高いボラティリティを目の当たりにした投資家にリセッション入りの恐怖を植え付けただろう。

「損を理解し、納得」してから行動を起こし経験値を増やす

今回の急落で大きな含み損を抱えている投資家に向けてメンタルとポジション管理について解説したい。

私も投資家なので、皆さんの含み損の口座を見るのが嫌になる気持ちや、「いつか回復する」という願望でネガティブな気持ちを払拭しようと奮起するのは理解できる。また、ポジティブなストラテジストや解説者の強気の見通しを都合よく熱心に聞く自分もいるだろう。

含み損に関しては「株価が上昇して含み損が減るのを待つ」「損切りする」の2つの行動のどちらかを選択するしかない。

皆さんは損切りをすることだけを考えて行動していないだろうか?勉強や仕事と同じで株式投資もやらされで行動するのはもったいない。含み損に耐えるにしても損切りするにしても、行動を起こす前に「損を理解し、納得」してからポジションを解消するというプロセスを経て欲しい。これにより原因究明や自発的な投資行動ができるので、経験値の増加により次の利益につながりやすいだろう。

押し目買いをしたい人へのアドバイス

耳が痛い話に付き合っていただいた投資家に、資金の考え方とテクニック的なことを記しておきたい。

「株式投資は余剰資金で投資する」というのは常識だが、この理由は資金需要が生じたとき、株式相場から強制退場しなければならないからである。

子どもの大学の入学金など、使う予定がある資金で投資をしている投資家と、余剰資金で投資をしている投資家とで比較すると、前者は格段に不利である。株式相場は長期低迷が想定されるため、余剰資金以外で長期的に含み損と付き合っていくのは不本意な株式相場からの退場につながるだろう。

次は押し目買いをしたい人へのアドバイスだが、内需株を損切りして乗り換える作戦はどうだろうか。インバウンド関連以外の内需株は軒並み日経平均の下げ幅に比べて小さく、損切りを行って大きく下落している銘柄に乗り換えて大きなリバウンドを取るという作戦である。

その他、配当の少ない銘柄を売却し、高配当銘柄に乗り換えて年月をかけて損失を取り返すという作戦も、余剰資金を用いた損失の取り返し方としては悪くないアイデアだろう。

嵐が過ぎるのを何もせず待つのも良いが、嵐に揉まれて経験値を積んだり、嵐の外側で要因分析や個人投資家の行動を眺めたりするのも、自分を成長させる1つのきっかけになるだろう。