中東情勢の混乱を受けて、株式市場は大発会から乱高下となりました。現時点では事態の悪化を避けるべく抑制的な動きが広がってきているようですが、明らかに国際情勢は混沌さを増してきたように感じています。

株式市場も当面はこういった予測不能なニュースには神経質な展開とならざるを得ないのではないかと考えています。しばし市場を離れて静観するくらいのスタンスが現在は必要なのかもしれません。

比較することで当該企業の立ち位置がより鮮明に見えてくる

当連載ではこれまで会社四季報の使い方の基礎編をお届けしてきました。今回からはそれらを実際に活用する応用編へと移行してみましょう。

そこで最初に採り上げるのは「銘柄比較」です。読者の中には最初から投資する銘柄を決めていて、そのタイミングや業績情報を会社四季報で確かめるという方もおられるでしょう。しかし、多くの方は銘柄そのものをこれから選ぼうという目的で会社四季報を利用されるのではないかと想像します。

まず個々の企業の情報を見て面白そうな銘柄を見つけると、当然ながら、その他にも有望な銘柄はないか確認することでしょう。その際に重要なのが、銘柄比較という作業です。比較することで、当該企業の立ち位置というものがより鮮明に見えてきます。今回はその中で最も一般的な同業他社間での比較を会社四季報で試みたいと思います。

有難いことに、会社四季報では当該企業の比較対象となる同業他社がコード番号付きで提示されています。書籍版では左端列のちょうど中程にある資本欄に記載されていますので(図表1参照)、簡単に調べることができるでしょう。ただし、現実にはそのページを開いて漫然と中身を読んでもなかなか実際に比較することはできません。そこで、簡単に比較する手順をここでご紹介いたしましょう。

【図表1】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

>>(資本欄の基礎編はこちら)会社四季報「資本」欄で過去の株価動向と資本コストの動きを見る

株式市場は当該企業へどのような評価をしているか、競合企業と比較

筆者がまず行う手順を紹介しましょう。これらはあくまで方法論の1つであり、それ以外の比較方法もまた無数にあることにご留意ください。アプローチの方法はなんであれ、そこから読者ご自身の比較方法というものを確立していただくことが重要だと筆者は考えます。

比較に際し、筆者が最初にざっと行うのは、ページ最上段の株価欄とページ左下の業績欄(図表2参照)の確認です。投資を考えるわけですから、株価は最重要データです。

【図表2】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

まず株価欄から当該企業の株価チャートを比較企業のそれと見比べ、予想PERなどのバリュエーションを比較するのです。

これにより、当該企業は(競合他社と比べて)、どの程度期待値が株価に織り込まれているのかを大まかに理解します。どれだけいい会社であっても、それらが期待値として全て織り込まれていては、株価のさらなる上昇余地は乏しく、投資対象としての魅力はあまりないと考えるためです。

細かな理由づけや詳細な分析はさておき、株式市場は当該企業に対してどういった評価をしているのかを競合企業と比較することでより明確に把握するのです。

>>(株価欄の基礎編はこちら)会社四季報「株価」欄で短期の値動きに惑わされない視点を持つ

企業の業績や財務状況を市場は妥当に評価しているか

次に、企業の業績や財務状況といったファンダメンタルズは、その期待値に沿ったものなのかどうかを業績欄で確認します。具体的には、業績拡大ピッチは競合と比べて速いのかどうか、営業利益率が示唆する製品・サービスの収益力はどうか、などです。これらは数字である程度機械的に比較したいところです。

そして、ファンダメンタルズと大まかに把握した株式市場の評価との乖離を見極めるのです。そもそも強いファンダメンタルズを有する企業では、高い株価バリュエーションが付与されているはずです。果たしてそうなっているのかどうかを他社との比較を通じて確認します。

その結果、株式市場が当該企業の成長性や競争力を過小評価している場合は、有望な投資対象と捉えることができるでしょう。この作業は地道で面倒に見えるかもしれませんが、慣れてくればさほど時間がかかるものではありません。むしろ、慣れるくらいに会社四季報を読み込んでみてください(笑)。

逆に、株式市場が妥当に評価しているようであれば、既に株価は多くの材料を織り込み済みである可能性があります。つまり、株価調整余地はそれほど大きくなく、投資魅力度は高くないと考えることができるでしょう。

>>(業績欄の基礎編はこちら)会社四季報「業績」欄で企業の置かれた状況を把握する

企業の本質的な価値と株式市場の評価が大きく乖離していたら?

では、ファンダメンタルズと株式市場の評価が大きく乖離していれば投資魅力度が高いかといえば、そうとも言い切れません。その企業の株価は業績動向とは違うファクターが大きく影響している可能性もまたあるためです。例えば、配当利回りが下支えになっている、業績修正期待が膨らんでいる、M&Aや業界再編などへの期待が大きい、といった要因です。

そういった場合は、まずページ下段中央にある配当利回りとページ欄外に記載されている予想修正(図表3参照)を確認してみましょう。特に大きく予想が修正されている場合は、株価は再度の予想修正期待をまた織り込み始めているケースが少なくありません。

【図表3】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

読者の皆さんには釈迦に説法ですが、株価の決定要因は無数にあり、その時々でカギとなる要因が変化しています。都度都度、現在はどういったファクターが株価の決定要因となっているかを探るためにも、同業他社との比較は非常に有効なプロセスなのです。

これでざっと銘柄比較のプロセスをこなすことができるはずです。とはいえ、まだかなり抽象的で分かりにくい部分も多かったのではないでしょうか。そこで、次回はこれらの手順に関して、いくつかの銘柄を採り上げてさらに具体的に手順を説明していくことにいたしましょう。