みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

株式市場では高値圏での揉み合いが続いています。直近の上げピッチが急であったことを考えれば当然の日柄調整とも言えるのでしょうが、徐々に振幅が大きくなってきていることは慎重に受け止めたいところです。米国のクリスマス商戦は順調とはいえ、国内景気については少しずつ厳しいニュースが目立つようになってきました。

災害やラグビーの盛り上がりで見えにくかった消費税増税の影響も今後ははっきりと見えてくることでしょう。引き続き、年末に向けて高値波乱の展開が発生する可能性に、ポジション的にも心構え的にも、備えをしておきたいところです。

投資対象の絞り込みや保有銘柄の状況確認に重要な欄

さて「アナリストが解説、会社四季報データ」基礎編9回目となる今回は、最下段左端に位置する「業績欄」に注目してみましょう。そもそも業績は企業価値を考える上で基本となる最重要データです。そういった観点では、この業績欄こそが会社四季報の核心という位置付けにあると言っても過言ではないでしょう。

【図表1】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

会社四季報はその名の通り、四季毎に発刊されています。この業績欄はそれに応じて四季毎に数字が小まめにアップデートされるため、いつでも最新の情報を目にすることができるのです。

業績欄には、その最も重要な項目である売上高、営業利益、経常利益(税前利益)、当期純利益、配当の5つのデータが時系列で記載されています。

もちろん、詳細に分析していくにはこれらだけではデータが足りず、有価証券報告書などをしっかりと読み取る必要があります。しかし、投資対象銘柄の絞り込みや保有銘柄の状況確認という目的であれば、重要データに絞り込んでの時系列開示というこの会社四季報スタイルはニーズに過不足なくハマるのです。かく云う筆者も、会社四季報を見るに際し、最初に、かつ丹念に目を通すのがこの業績欄なのです。

現実性が高い業績見通しを第三者の会社四季報が四半期ごとに提示

この欄の最大の特徴は、業績見通しが2期分、しかも四季報独自の見通しが記載されている点です。一般的に目にすることのできる業績見通しは、会社側が公表している進行期1期分のものしかありません。

証券アナリストが執筆するアナリストレポートではより長期の見通しが語られることもありますが、それらが一般に公開されることはまずないのが実情です。しかし、期も中盤を過ぎてくると来期の業績観測を株価はどんどん織り込んでいくのもまた事実です。会社四季報はそういったニーズに対応できている数少ないメディアの1つと言えるのです。

本コラムの第1回「なぜ「会社四季報」が株式投資に必要なのか」でも書いた通り、会社四季報は多くの市場参加者が見ているという点で市場浸透力が非常に高いものです。ここでの2期分の業績見通しは、コンセンサスを形成するという観点からも非常に重要であると言えるでしょう。

しかも、その見通しの数字は会社四季報独自のモノというのもポイントです。「会社見通しの公式修正」はどうしても後追いとなりがちであるのに対し、少なくともより現実性が高いと考えられる見通しを第三者である会社四季報が四半期ごとに提示するという点が重要なのです。

そして、業績欄では会社自身の公式見通しも記載されていますので、この2つの数字を比較すれば、現実にどういったことが起こっているかを推察することもできます。会社側による業績見通し修正発表を予測する材料として活用することもできるでしょう。

営業利益、経常利益、当期純利益の時系列推移が一目でわかる

もう1つの注目点は、3つの利益とその時系列推移が一目でわかる点です。時系列が重要であることは論をまたないでしょう。

中長期の将来を見て投資を考えるならば、過去の中長期推移を確認することは必須です。業績欄では少なくとも4~5期分の過去の推移がわかります。伸びているのか、停滞しているのかなど、大まかに企業の置かれている状況を簡単に把握することができるのです。

また、営業利益、経常利益(税前利益)、当期純利益の3つの利益を比較することも重要です。財務をご存知の方には釈迦に説法ですが、営業利益は本業で稼ぎ出した「実力の」利益、経常利益(税前利益)は本業以外の財務的な費用や収入を営業利益に加えた「総合的な」利益、そして当期純利益は税金を差し引いて株主の取り分となった「真水の」利益を示しています。

この3つの利益を横一線で比較すると、会社がどこで儲けているのかが一目瞭然です。純利益が大幅増でも、営業利益が苦戦していれば実力面で疑問符が付きますし、その逆であれば実力面では心配ない、という判断もできます。各利益を比較するだけで、企業の置かれた状況をある程度把握することが可能なのです。

業績欄の見方については、数回のコラムでも書ききれないほどのポイントが実はあるのですが、基礎編としてまずは上記の2つのポイントに力点を置いて解説してみました。より実用的なポイントは、次に予定されている応用編での解説に譲ることといたしましょう。