2020年、明けましておめでとうございます。年末年始のお休みはいかが過ごされましたでしょうか。

海外の株式市場では大きな波乱もなかったようでしたが、日産元会長の「逃亡劇」、イラン革命防衛隊司令官の暗殺など、きな臭いニュースもまた相次ぎました。これらが及ぼす影響はまだ株式市場に織り込みきれていません。年末まで堅調な推移の続いた国内株式市場でしたが、当面はこういったニュースの影響を見極める流れになってくるのではないかと考えています。

3年半分の月足推移で中長期的な流れを俯瞰できる

さて今回は、ページ最上位に位置する「株価欄」に注目してみましょう。ここでは株価チャートとPERやPBRといったバリュエーションが記載され、これまで株価がどういった評価をされてきたかが一目でわかるようになっています。とはいえ、この欄の重要性はこれまで紹介してきた各欄と比較すると相対的に低いとも言えるかもしれません。

【図表1】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

この株価欄で記載されている内容は、独自性の高いその他の欄とは異なり、ネット情報など様々な媒体で今や簡単に調べ、入手することができるためです。

会社四季報の読者はそもそも株式投資への関心が高い方々であり、おそらくは会社四季報にたどり着く前に何らかの媒体でこれらと似た情報に接したことがあるはずです。会社四季報の熱心な読者であっても、この株価欄に限ってはあえて会社四季報に頼る必要がないと受け止めておられる方も少なくないのではないか、と筆者は想像しています。

しかし、だからこそでしょう。情報の宝庫たる会社四季報は一味違ったまとめ方をこの株価欄では展開しています。その分、使いこなすにはいささか慣れを要する感は否めませんが、実はなかなかに考え抜かれた情報が提供されているのです。

まず、最も独自色を出し難い株価チャートでは、会社四季報は3年半分の月足推移を採用し、やや長期の投資スタンスに対応しようという意図を明確にしています。これは、四半期毎に細かにデータを確認するという書籍の特性に沿ったアプローチであるともいえます。

ネット情報などでは1ヶ月や3ヶ月の日足もしくは週足推移がデフォルトであり、時には数分足といったより短期の動きにも注目していることを考えれば、そのスタンスの違いは明らかでしょう。調べている銘柄について、短期の株価の値動きに惑わされず、中長期的な流れを俯瞰するには非常に有効な株価チャートであると筆者は位置づけます。

2期分の予想PERはより現実的な独自見通しを提示

より筆者が注目するのは、株価チャートの右、最上段に記載されている予想PERです。ここでの予想PERは、その他の媒体の提示する予想PERとは一線を画し、会社四季報における2期分の独自予想を基準としてバリュエーションが掲載されています。

会社四季報は会社見通しとは関係なく、その時点での独自見通しを提示していることは既にご存知の通りでしょう。つまり、ここで掲載されている予想PERは、東洋経済新報社(会社四季報の発行元)の直近の見立てに基づいて、より現実的かつ実勢に即したものとなっていると言えるのです。

対照的に一般に公開入手できる予想PERは、進行期である1期分、しかも会社見通しを基準に算出されているケースがほとんどです。期の進行に伴ってその実現性に乖離が生じてきても、会社側が予想修正を出さない限り、それが反映されることはありません。

会社四季報記載の予想PERは、株式市場が当該企業に対してどういった評価をしているか、どういった期待をしているか、を測る「最新の」モノサシとなっているのです。

実績PERの高値平均と安値平均で株価評価のブレを見る

さらに、なかなか面白いデータだと筆者が感じているのは、予想PERの下に記載されている実績PERにおける高値平均と安値平均です。

この数字は、株価の評価が1年でどの程度ブレるかを示したものです。これは慣れないとピンとこない数字かもしれませんが、筆者にとってはその企業の期待値(=PER)がどのくらいの振幅で推移するものなのかを示す目安として、非常に重宝しているものです。

株価ですから、上げ過ぎたり下げ過ぎたりという現象は必ず発生します。人間は弱いもので、相場に過熱感があっても「まだ上値があるのではないか」と考えてしまうものです(その逆も同様です)。

そういった際に、これは行き過ぎであるかどうかを判断するモノサシがあれば、非常に助かるだろうことはご理解いただけるでしょう。これらはあくまで過去の実績ですから次回も必ずそうなるというものではありませんが、株価の行き過ぎ度合いを測る1つの目安として活用したいデータなのです。

さて、これまで10回にわたって会社四季報の基礎的な見方についてまとめてきました。これでほぼ全項目を網羅できたことになります。これにて基礎編は一旦終了し、次回からは応用編として、もう少し凝った会社四季報のデータ活用術について解説をしていきましょう。