米中通商協議の一部合意で10月中旬の中国株は上昇

10月中旬の中国株は上昇となりました。米中通商協議で一部合意があり、10月15日(火)に予定されていた、2,500億ドル相当の中国からの輸入品への関税率を25%から30%に引き上げる追加関税が見送られたことによります。

正式な合意締結はこれからとなりますが、10月19日(土)には中国の劉鶴副首相が「米国との貿易協議が前進しており、部分的な合意に向けて米中両国が取り組んでいる」と述べるなど、前向きな報道が続いています。

このままうまくいけば、11月に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でトランプ米大統領と習近平国家主席が会談し、部分的な合意に署名される可能性があります。

米中共にこれ以上の貿易戦争激化は避けたいはず

もちろん、問題はまだ完全に払しょくされたわけではありません。今回の部分合意には、
12月15日(日)に予定されている1,600億ドル相当の中国からの輸入品への追加関税に関しての延期の話は含まれていない様子です。

また、米国が長らく指摘してきた中国の強制的な技術移転や産業補助金についての話も含まれないのではないかと思われます。

しかし、米中共に経済指標の悪化が目立つようになってきている中で、おそらくこれ以上の貿易戦争の激化は両国ともに許容できないのではないかと思います。

好調と見られている米国経済についても、たとえば、9月の小売売上高が市場予想の前月比0.2%増を下回り、0.3%減となって7ヶ月振りにマイナスとなるなど、予想を下回る指標が出てきています。

来年に米大統領選挙を控えるトランプ米大統領としても、景気と株価を来年に向けて良くしていく必要がありますので、これ以上の貿易戦争激化は避けたいところと思います。

中国の第3四半期のGDP成長率は予想を下回る

一方、中国の経済指標も気になる数字が出ています。まず、10月18日(金)に発表された第3四半期のGDP成長率は前年比6.0%増と市場予想の6.1%増を下回りました。これによって景気減速が懸念され、同日の中国本土株は大きく調整しました。

また、9月の消費者物価指数は前年比3%の上昇となり、6年ぶりの上昇率となりました(市場予想は2.9%増)。消費者物価指数が上昇していくと、インフレの懸念が出てきますので金融緩和による景気刺激を思うようにできなくなります。

なお、消費者物価指数の上昇は豚肉価格が豚コレラの影響で12年ぶりの高水準(70%高)となったことが要因の1つとなっています。豚肉価格は今後も上昇すると予想されており、消費者物価指数の上昇には注意が必要なところです。

11月以降はアノマリー的に中国株の堅調な推移を期待

ともあれ、中国政府としても、これ以上の貿易戦争激化は避けたいところにあるはずです。結果として、米中通商協議は、完全な合意は無理としても、今回のような部分合意や休戦を繰り返すような感じになるのではないでしょうか。

そうなれば株価への悪影響は限定的なものとなり、アノマリー的に、世界的に株価が上昇に向かいやすい11月以降は中国株も堅調な推移を期待できると思いますが、どうでしょうか。

なお、10月18日(金)の中国本土株は大きく下落しましたが、香港株は小幅な下落で済んでいます。香港株はデモの長期化懸念は続いているものの、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官が短期間に公共住宅や若者向け宿舎を供給する住宅問題最優先施策を発表したことから、香港地場のディベロッパー銘柄が買われており、香港ハンセン指数を牽引しています。

香港株も割安感が強いので、11月以降の株価の上昇に期待したいところです。