弱い中国の経済指標、香港デモで軟調に
先週の中国株は、中国の弱い経済指標や「逃亡犯条例」改正案を巡る香港のデモが続いて収束の兆しが見えないこと、7月末に行われた米中通商協議に進展が見られなかったことが要因となって、香港ハンセン指数は週半ばから下落基調にありました。
7月31日(水)に発表された7月の中国国家製造業購買担当者景気指数は49.7となり、市場予想の49.6や6月の49.4よりは良かったものの、景況感の境目である50を引き続き割り込みました。また、8月1日(木)に発表されたCaixin製造業購買担当者景気指数も49.9と市場予想の49.5や6月の49.4よりは良かったものの、景況感の境目である50を割り込みました。
また、「逃亡犯条例」改正案を巡る香港のデモが収束の兆しを見せない中で、香港地場の不動産銘柄が業績に対する懸念から売られました。
米中通商協議の難航も影響
さらに7月30日(火)から米中通商協議が再開されたものの、初日からトランプ大統領が「中国側は全くひどい。過去27年間で最悪だ。米国の農産物を今の時点で購入し始めているはずだったのに、そうする兆しが一切ない」「中国の問題点は、約束を果たさないことだ」などとツイッターに投稿。
そして実際に、協議ではほとんど進展が見られず、予定時間よりも早めに終了したとのことで、さらに株価の下落基調が強まりました。
香港ハンセン指数は8月1日(木)の時点で、一目均衡表で売りの指標となる三役逆転となってしまいました。つまり、株価が雲を下に突き抜け、転換線が基準線を上から下に突き抜け、さらに遅行スパンが株価を下に突き抜けました。
移動平均線と株価の位置関係についても、50日移動平均線を株価が割り込み200日移動平均線に支えられてギリギリ下げ止まっているという状況でした。
対中関税第4弾の発表で急落
そして8月2日(金)にトランプ大統領が対中制裁関税第4弾を表明すると、香港ハンセン指数は200日移動平均線を大きく下回る大幅な下げとなりました。3日続落となるこの日の売買代金は大きなもので、6月4日(火)につけた安値を割り込む手前の株価位置まで下がっています。
対中制裁関税第4弾表明後の2日間で、香港市場では医薬、エネルギー、不動産、一般消費財、素材、ITなど、ほぼ全面安と言える状態です。公益セクターのみが限定的な下げ幅となり、典型的なリスクオフ時のセクター間の株価推移となっています。
下落した優良銘柄の購入チャンスにもなり得る
今後については、やはり対中制裁関税第4弾の行方が鍵となりそうです。今回の対中追加関税第4弾は約3,000億ドルにも及ぶ広範囲な製品が対象で、これまで避けられてきた米国の消費者に悪影響を及ぼす可能性のあるスマートフォン、パソコン、アパレル、玩具などが含まれます。
しかし、実施の日は9月1日と余裕を設けていることから、それまでに解決して取り下げる望みを残しているとも考えられます。仮に対中追加関税第4弾が実施されれば世界的にも半導体や幅広い消費、設備投資に悪影響を及ぼすと思われます。
そうなってしまえば9月末に米国のFRBが利下げをしても、景気や株価の下落に歯止めはかからないでしょう。むしろ利下げ余地があとわずかしか残っていないことが意識され、今後の不安を増幅させる展開になると思います。
そして、このようなシナリオは容易に想像できるため、最終的には制裁実施を回避する(脅しに終わる)というのが、もっともありえる選択肢だと思います。そのように考えていくと、中国株においても優良銘柄が下落したところは購入のチャンスにもなり得ると思いますが、どうでしょうか?