7月8日に流れが変わった

7月の中国株ですが、6月末からの月間推移では香港ハンセン指数、上海総合指数ともに反落となっています。7月初めは堅調な株価推移が続いていたのですが、流れが変わったのは7月8日(月)です。この日に両指数は大きく下落しました。

【図表1】上海総合
出所:マネックス証券

米国の雇用統計が予想よりも良い結果となり、米国の早期利下げ期待が後退したことから世界的な株安が起こり、その影響を受けて下落しました。その後、好調な企業業績や利下げ期待から米国株は上昇していくのですが、中国株は軟調な動きが続きました。

これにはいくつかの原因があります。まず、7月22日(月)から取引が開始される新興企業の上場市場「科創板」に資金が流入するのではないかとの懸念が中国本土株を押し下げたこと。そして米中通商協議に関して新たな進展が見られていないことです。

また、この期間に発表された中国の経済指標も株価の重しとなりました。まず、第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は6.2%と、市場予想通りであったものの1992年以降で最も低い伸びとなり、改めて中国経済のスローダウンが意識される結果となりました。

6月の貿易統計は輸出、輸入ともに減少しました。6月の輸出がドル建てで前年比で市場予想の1.4%減よりも若干良い1.3%減だったのですが、輸入はドル建てで前年比で市場予想の4.5%減よりも悪い7.3%減。

また、マネーサプライ(M2)は前年比8.5%増と市場予想の8.6%増を下回りました。一方、6月の鉱工業生産は前年比6.3%増と市場予想の5.2%増を上回り、小売売上高も前年比9.8%増と、市場予想の8.5%増を上回りました。

6月の鉱工業生産や小売売上高のように、悪い数字だけではなく良い数字も出ているのですが、全般的には軟調な数字が続いていると捉えられている様子です。

3ヶ月ぶりに米中通商協議は再開されるが…

7月29日(月)にムニューシン米財務長官とライトハイザー通商代表部代表が、米中通商協議のために中国に出発する予定です。協議は7月30日からの2日間行われ、約3ヶ月ぶりの対面協議となります。

ただ、この協議で大きな進展は期待されていない様子です。トランプ大統領は協議の早期合意に悲観的な見方を示し、7月26日(金)には、中国は民主党との合意を望むと思われることから、2020年の米大統領選挙後まで合意を待つ可能性があるとコメントを出しました。民主党候補の1人であるバイデン前副大統領は親中派ですので、中国は来年の大統領選挙の結果が出る前に急いで協議を妥結する必要はないと考えているだろうというわけです。

また、クドロー国家経済会議委員長も、米中通商協議は進んではいるものの、まだ合意はないと、早期の合意は難しいと示唆するコメントを述べています。

8月の中国株も上値が重い展開に

このように考えていくと8月の中国株は全体として上値が重い展開となりそうです。

米国株は利下げ期待や好調な企業業績を背景として堅調な株価推移を続けると見られるところで、中国株もその恩恵は受けると思います。しかし、やはり米中通商協議の進展がなければ、中国経済は緩やかなスローダウンを続けていくと予想されるため、これが株価の上値を抑えそうです。

その一方で、注目したいのは8月に発表される予定の主要企業の上半期決算です。時価総額の大きなAIA(01299)、テンセント(00700)、HSBC(00005)、中国本土金融株の業績が予想を上回ってくるようなら、上昇トレンドに戻るキッカケとなるでしょう。