経済指標は景気減速を示唆するも、中国株は堅調な推移

2月15日(金)は比較的大きな反落となったものの、旧正月の連休明けも中国株は堅調な株価推移が続いています。香港ハンセン指数は200日移動平均線の上を推移しており、出遅れていた上海総合指数も100日移動平均線を株価が上抜け、200日移動平均線にトライしているところです。

株価の歩調を見ても、株価が下げる日は出来高が大きく膨らむようなことはなく、逆に上昇するときは出来高を拡大しての上昇が多くなっています。これは上昇トレンド時の典型的な株価と出来高の組み合わせです。

前回も書きましたが、足元で発表されている中国の経済指標は中国経済のスローダウンを示唆しています。たとえば、2月15日(金)に発表された1月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比0.1%増で、市場平均予想の0.3%増や12月実績の+0.9%を下回りました。また、消費者物価指数(CPI)も前年同月比1.7%増で市場平均予想と12月実績の1.9%の上昇を下回り、こちらは1年ぶりの低水準となっています。

これを受けて、確かに2月15日(金)の中国株は軟調に推移しました。しかし、これは中国の景気減速を懸念して株価が下落したというよりは、2月14日(木)~15日(金)に行われていた米中の閣僚級の通商協議の結果がハッキリする前に利食い売りの圧力がかかった感じです。

そして、結局、米中通商協議については「主要な点について原則コンセンサスに達した」との報道があり、今週、ワシントンで通商協議を継続することが合意されました。これを受けて、2月15日(金)の米国株は大きく上昇していますし、中国株の先物も大きく戻しています。

やはり、米中共に、貿易問題を放置することへの悪影響を無視できず歩み寄りの姿勢を見せている様子です。期限とされている3月1日(金)までに完全合意に至らなかったとしても、中国製品に対する関税は予定の25%へ引き上げられることはなく、期限後も10%にとどまる可能性が高いとCNBCが報じているように、米中通商協議は良い方向に向かっています。

中国当局の政策が株価を後押し、米中通商協議の進展で一段高へ

さらに言えば、現時点で消費者物価指数が低く、インフレ懸念がないことは中国株にとって大きなプラスです。これはシェール革命によって原油価格が上昇しにくくなっている点などが影響している結果ですが、ともあれ、インフレ懸念がありませんので、中国当局は景気刺激のために金融緩和を行う事ができます。

ちなみにサブプライムバブルで株価が大きく上昇した2007~2008年は中国の消費者物価指数が前年比8.7%増にまで達し、インフレを防ぐために金利の引き上げを余儀なくされ、景気悪化と株価下落に拍車をかけた経緯があります。これは中国に限ったことではありませんが、新興国にとっての一番の敵はインフレであり、それが今回、懸念しなくても良い点は非常に安心感があると言えるでしょう。

金融緩和もそうですが、引き続き中国当局の財政投資拡大への期待感も株価をサポートしています。たとえば先週は医薬関連の税制優遇策が発表されて医薬関連銘柄が大きく上昇しました。

以前からお伝えしている通り、中国は自動車や家電の消費刺激策やインフラ投資拡大、減税に取り組んでおり、第2四半期以降はこれらの効果が発現して景気の下支え要因となるでしょう。

中国株は先進国の相場サイクルが当てはまらず、中国当局の政策によって上にも下にも行く特徴があります。しかし、まさに現在行われている中国当局の政策は、先進国の相場サイクルで言えば、金融相場(景気悪化の最中に中央銀行が金融緩和を行い、政府が財政投資を拡大することで引き起こされる、景気悪化状態からの初期の株価上昇局面)を引き起こすような政策が採られており、実際のところ株価も堅調です。

この状態で米中通商協議に大きな前進があれば、中国株は一段高の体制に入っていけると思います。