バンガードの創業者、ジャック・ボーグル氏がなくなられた。
1999年、マネックスが創業した直後に、バンガードは日本でのパートナーを探し、なんと創業間もない、本当にひよっこのようなマネックスを、当時でも世界第二位の投信会社であったバンガードは、そのパートナーとして選んでくれた。
そして2000年7月、バンガードは歴史上初めて、アメリカ以外の国でその投信を販売することを、それを日本に於いてマネックスを通して行うことを発表した。

偉大な会社バンガードは、何故赤ん坊のようなマネックスをパートナーとして選んでくれたのだろう?
私の理解はこうだ。
投資の基本は、低コストで運用された分散投資アセットを長期に保有すること。
そして投資の判断は、プッシュされて決めるのではなく、投資家が自らの意思で決めること。
そういった理念を、私たちは共有していたのではないか。
裏を返せば、少なくとも当時、そのような考え方をする証券会社は、日本ではとても珍しかったのだ。

インデックス・ファンド、インデックス投資は、いやバンガードという存在は、投資の世界に巨大な革命を起こしてきた。
低コストのインデックス投資という考え方、受益者の利益を何よりも重要に据える考え方。
その揺るがない信念は、マーケットという或る時は冷徹で、また或る時は感情的過ぎる場に於いて、強く、孤高で、しかし温かく、そして燦然たる輝きを常に照らしてきた。
その偉大な存在バンガードの基盤を創った偉大な創業者が、ジャック・ボーグル氏だ。

私は何度か Valley Forge にあるバンガードの本社を訪れたことがある。
当時の経営者であるジャック・ブレナン氏と経営陣の皆さんは、いつも温かく迎えてくれた。
そんな訪問のうちの或る時、私は本社の玄関近くの静かなステアケースで、まるで玄関の壁に組み込まれた肖像画のように、静かで、威厳を持ちつつも、周囲に完全に溶け込んだ、かくしゃくとした、老紳士を見掛けた。
するとバンガードの役員が、優しい顔で、あれがジャック・ボーグル氏であると
教えてくれた。
ジャック・ボーグル氏に直接お会いすることが出来たことは、私の人生の宝である。

投資の世界に革命を起こし、永遠に生き続ける普遍的な投資哲学と、投資理論と、何よりも受益者のための仕組みを考え出し、それを実現した偉大なる人物、ジャック・ボーグル氏。
巨星墜つ、とはまさにこのことか。
ジャック・ボーグル氏の投資に対する考え方と、受益者に対する思いを今ひとたび良く咀嚼し、マネックスのお客さまのために真剣に商品とサービスを考え、そして提供していくことで、ジャック・ボーグル氏に対する追悼の意を表し、実現していきたい。