明けましておめでとうございます。本年も【新潮流】をどうぞよろしくお願い致します。
◆新春恒例の初競りが豊洲市場で開かれ、大間産のクロマグロが1匹3億3360万円の史上最高値で競り落とされた。2013年に付けたこれまでの最高値を6年ぶりに更新した。1キロあたり120万円。寿司に換算すると1貫あたり2万4千円になるという(1貫にのっているマグロは20グラムというわけだ)。それでも競り落とした寿司チェーンは、中トロ1貫321円など通常の価格で振る舞うという。なんとも豪気な計らいではないか。
◆このニュースを見て僕は、2013年の初めに書いたストラテジーレポート「年頭所感2013:アムラーと失楽園」を思い出した。レポートでは当時最高値で競り落とされたマグロの初競りに言及し、アベノミクスの実質1年目始動の雰囲気を「祝祭的」「バブル的」昂揚感と指摘した。果たして2013年はプチバブルとも言える様相で、株価は大きく上昇した。
◆アベノミクスが始まってから6年たった。これまでアベノミクス以来6年続いた日経平均の年間上昇記録は昨年2018年に途絶えた。これをもってアベノミクスの終焉などという声も聞かれるが、そもそもアベノミクスとは何だったのか。その実態はよくわからない。前述のレポートで(およびそれに先立つ何本かのレポートでも)僕は「安倍政権誕生+グローバル景気の回復」が株価上昇の鍵であると繰り返し述べていた。実はアベノミクスが成功したのはグローバル景気が循環的に回復局面に当たったというタイミングの妙がある。
◆今年のマグロの史上最高値3億3360万円は6年前につけた高値1億5540万円の2倍だ。実は日経平均も当時から倍になっている。13年の初めはやっと1万円を回復したばかりだった。今はなんだかんだ言っても2万円、倍になった。クロマグロの本質は6年前と変わっていないだろう。それで価格が倍になったのならバリュエーション(評価尺度)が倍になったということだ。株価のバリュエーションは6年前のPBR1倍に逆戻り。それで株価が倍になったということはバリュエーションの上昇に頼らず、資本の成長だけで倍になったということだ。これがこの6年間の成果である。
◆資本の成長とバリュエーションの拡大、その双方が株式リターンを生む源泉だ。80年代バブルの反省からかバリュエーションが拡大しない相場がずっと続いてきた。だけどそろそろいいのではないか。いくらなんでも今のバリュエーションは安すぎる。今年はバリュエーションの拡大を期待したい。本質が変わらないのに価格が倍になるクロマグロほどのバリュエーションは要らない。せめて平均回帰で御の字である。