ファーウェイショックと通商協議の先行き懸念で株価は再び調整へ

前回お伝えしたように、米中首脳会談で追加関税の先送りを勝ち取った中国ですが、12月3日(月)と4日(火)はその結果を好感して中国株は大きく上昇しました。しかし、その後は12月10日(月)に向けて大きく調整しています。

これはトランプ大統領が「交渉決裂の場合は再び関税発動」とコメントしたことで、米中首脳会談での貿易を巡る取引合意について、実際には何処まで合意したのか?という疑念が出てきたことによるものです。さらに、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)の幹部逮捕によって、米中通商協議が難航するのではないかとの懸念が台頭したことも関係しています。

もっともその後、中国商務省が米中貿易協議は順調に推移していると述べたことなどから株価はやや反発しています。

一方、ここにきて中国の経済指標はやや弱含む数字が出ています。11月の小売売上高は8.1%増と市場予想の8.8%増、10月実績の8.6%増を下回り、11月の鉱工業生産も5.4%増と市場予想・10月実績の5.9%増を下回っています。

もっとも、一方的に悪い数字ばかりが出ているのではなく、たとえば、11月の人民元新規融資額は1兆2500億元となり、予想の1兆1500億元、10月実績の6970億元を上回りました。また、11月の経済全体での資金調達額も1兆5191億元と、予想の1兆3500億元、10月実績の7430億元をそれぞれ上回っています。

さらに11月のCaixin中国サービス業PMIは53.8と市場予想の50.7や10月実績の50.8を上回っています。これらは中国の金融緩和・財政投資拡大の効果が徐々に表れているものとみられるでしょう。

通商協議の進展に期待、引き続き中国株の買い場が続くか!?

ここで世界の経済を改めて俯瞰してみると、米国はトランプ大統領が推し進める財政投資拡大(大規模減税とインフラ投資拡大)によって、経済は好調を維持しています。一方、欧州は緊縮財政が続けられる中で、これまで景気と株価を支えてきた量的緩和が12月に終了し、景気と株価は下落基調が鮮明です。

また、中国はトランプ大統領に貿易戦争を仕掛けられたことで、これまで景気をけん引していた輸出の先行きに暗雲が立ち込めました。これにより経済が減速基調となってきており、これがアジア全体に影響を及ぼしつつあります。ちょうど先週末は、ニューヨークダウが終値ベースで11月につけた直近安値を下回って引けました。欧州と中国(アジア)の景気が減速する中では、世界経済や米国の成長鈍化は免れられないとの懸念が株価の重しとなっているようです。

しかし、中国との通商問題が米国経済や米国株に与える影響が予想以上に大きいことを米国も認識してきている様子で、たとえば、トランプ大統領は中国の景気減速の理由は貿易摩擦だと指摘しつつ、中国と近く(通商問題について)合意に至る可能性について言及しています。

一方、中国としても、景気のこれ以上の下押しは許容できないところと思います。2018年第3四半期の実質GDP成長率は6.5%増まで落ち込んできています。中国当局は国内の十分な雇用創出には6.5%の経済成長が必要と考えていますので、これ以上の景気減速は避けたいところだと思います。

そして実際のところ、トランプ大統領も「中国から『とても強いシグナル』が送られている」とコメントしているように、中国側はここに来て、かなり柔軟な姿勢を取ってきているように見えます。

このように考えていくと、もちろん予断は許しませんが、米中の通商協議は、3月1日の期限までに、解決に向けて何らかの成果が出てくる可能性の方が高いのではないかと予想します。もちろん、それまでには双方の意見の食い違いなどやけん制的な発言などが報道され、株価が押し下がる場面もあると思います。しかし、既にかなりの安値となって、株価も下げ渋りを見せている中国株ですから、その場面は買いのチャンスともとれるのではないかと思います。

何度も書きますが、中国は既に経済を下支えするために金融緩和と財政投資拡大の方向に舵を切っています。前述のように徐々に効果が出てきているところで、来年の第1四半期にははっきりとその影響が出てくるのではないでしょうか。そのタイミングに通商問題の解決が見られれば、中国株は大きく上昇する可能性があるのではないかと見ています。