先週の中国株ですが週末に急騰しました。特にこれまで大きく売られていたテンセント(00700)や吉利汽車(00175)などのグロース株が大きく買い戻されています。

これは米中通商問題への後退が要因です。まず、トランプ大統領が「習氏と良い会話した」と米中通商協議の進展を示唆。その後、11月2日(金)にトランプ大統領が中国との貿易合意の草案作成を要請との報道があると中国株は急騰しました。

トランプ大統領は重要閣僚らに、ヒートアップする貿易摩擦の休戦を示唆するような合意の文書を策定するよう、スタッフに指示することを求めたとのことです。中間選挙前の対策の側面もあるかもしれませんが、中間選挙を機に米中が歩み寄りの姿勢を見せれば中国株は急激に反発する余地があるとみます。

ちなみに10月末には中国政府が不足している鉄道や空港などの整備加速を指示し、インフラ投資拡大の意向を示しています。前回も書きましたが、既に中国政府は貿易問題で景気が悪化しないように金融緩和と財政投資拡大(個人や法人の減税やインフラ投資拡大)に舵を切っています。

例年、中国では第4四半期にインフラ投資が加速する傾向がありますが、2018年はさらに期待感が高まるところで、その結果は今後の経済指標に表れてくるのではないでしょうか。

そして、現時点でも中国の大手企業の業績は緩やかな拡大基調の見通しとなっています。たとえば、中国最大の銀行である中国工商銀行(01398)の今期と来期の純利益の伸び率予想の平均は、市場コンセンサスで7%となっています。同社の今期予想PERは5.78倍、予想配当利回りは5.25%もあります。

配当利回りの予想でいえば、中国3大石油会社の一角である中国石油化工(00386)の配当利回りは9%近くあり、同社の業績予想も今期、来期共に市場コンセンサスでは増益見通しです。中国石油化工(00386)は中国最大級の石油化学コンビナートを運営すると同時に、3万ヶ所を超えるガソリンスタンドと、併設して2万6000ヶ所ものコンビニエンスストアを運営するなど、中国最大の川下部門(小売、流通)を持ちます。

つまり、中国石油化工(00386)は原油の採掘から精製、販売に至るまでをカバーする巨大な石油会社で、規模の観点から急激な成長は期待できないものの、中国のGDPに合わせて緩やかな成長を期待できるような中国を代表する企業の1つです。そのような銘柄の配当利回りが9%近くあるのが中国株の現状なのです。

安定企業の利回りが9%なら、株価がまったく上がらなくても(配当が維持されれば)10年間の配当だけでほぼ元が取れる計算となります。このように考えていくと、長期的な視点で見れば、中国株は非常に割安な水準に放置されていると言え、米中通商問題の完全解決は難しいとしても、懸念が少しでも後退すれば、中国株が大きく上昇する可能性も十分考えられると思います。