今週の最大のイベントは米国の中間選挙であることは言うまでもない。上院は与党・共和党が過半を確保するのがほぼ確実とみられている一方、下院は予断を許さない。民主党が優勢だが激戦区も多く、また共和党が巻き返しているとの観測もある。

下院で民主党が勝てば、議会は「ねじれ」となる。法案が通過しにくくなるとの懸念から株安・円高になるとの見方もあるが、そうはならないだろう。第一に、下院は民主党優勢というのがメインシナリオだから、メインシナリオ通りに決まればサプライズにはならない。市場の反応は限定的となるだろう。

第二に、法案を通しにくくなるというが、既に減税は実施済みで、トランプ大統領が掲げた公約のうち残っている目玉政策は巨額のインフラ投資である。しかし、こうした大統領の政策に対して懐疑的なのは与党共和党のほうであって、実は民主党はインフラ投資の増額を長年にわたって推進してきた。下院が民主党となればインフラ投資案はむしろ推進しやすい。

では下院で共和党が巻き返して勝った場合はどうか。法人減税の効果が切れる2020年に向けて、追加の政策が打ち出されるとの期待から、株高・円安になるだろう。

選挙の事前調査は当てにならないことはEU離脱を決めた英国の国民投票や2年前の米大統領選でも体験済みである。従って市場は中間選挙の結果について事前に確固としたビューを持っていない。下院については民主党、共和党どちらの勝利もあり得ると柔軟に構えている。従ってサプライズで波乱、ということにはなりにくい。上院・下院とも民主党が制するというのがサプライズだが、可能性はとても低いのでそのシナリオは棄てていいだろう。

ダウ平均は下げ幅の半値戻しを取引時間中の値動きで一時達成した。「半値戻しは全値戻し」の格言通りになるか。それにはまず終値でも半値戻しを固めること。もうひとつは米国長期金利の落ち着きである。先週の雇用統計を受けて10年債利回りは再び3.2%台に上昇した。米国株のPERはまだ妥当な水準にあるため、金利対比の割高感は高まっていない。この程度の金利上昇なら耐えられる。長期金利が3.2%だとするとイールドスプレッドで3%を確保する益利回りは6.2%、PERでは16倍強が許容範囲でS&P500で言えば2800ポイントあたりまで。それを超えるには業績の伸びが必要であるため、しばらく時間を要するだろう。

米国の金利上昇は米国株にとって重石だが、ドル円相場を支え、日本株にはプラス材料である。株式市場は大幅安になったがドル円は米国金利上昇を背景に非常に堅調であった。

2日の日経平均は556円高と急伸した。いくつかの要因のうち、米中貿易問題の懸念が後退したこともある。それを如実に表したのが午後に「トランプ米大統領が米中貿易合意の草案作成を指示した」との報道が伝わると相場上昇に弾みがついたことだ。しかし、ストラテジーレポートでも述べたが、これは中間選挙を意識したリップサービスである可能性が高い。選挙が終わってしまえば再び敵対路線に戻るリスクもある。月末のブエノスアイレスG20での米中首脳会談までは、まだ一波乱もふた波乱もあると思っておいた方がよさそうだ。

日経平均はフィボナッチの38.2%戻しを固めれば次の半値戻し2万2700円を試しにいける。だがその前に2万2500円という節目をクリアする必要がある。現在のEPSで2万2500円はPER13倍ちょうどだから、少しでもEPSが増額になれば12倍台に下がるので本来であれば楽にクリアできる水準だ。その意味でも6日のトヨタの決算発表が注目される。

今週の予想レンジは2万1800円~2万2500円とする。