「山重水複疑無路 柳暗花明又一村」(さんちょうすいふくみちなきをうたがいりゅうあんかめいまたいっそん)

南宋の詩人・陸游の、遊山西村という詩の一節です。混乱や苦労のあとに、ぽぉっと明るい出口がある。そういう情景を謳った詩です。これは元々、今からちょうど12年ほど前に、中国の知人がEメールで私に送ってきたメッセージです。その知人と私は、大変難しい或る用事に、五里霧中な環境の中で2年以上一緒に取り組んだのでした。そしてなんとかそれを成し遂げた時に、彼はただこの詩と、「信頼」がそれを実現したのだとだけ、書いてきました。

今、この詩を読み返して、初めて気が付いたことがあります。「又一村」とあります。七言に収めるための調子を取る一文字とも考えられますが、もっと実質的な意味があるかも知れません。困難に囲まれて五里霧中になることは何度も起きることであり、明るい穏やかな村が現れることも、何度も何度も反復してあるからこそ、「又」一村なのではないかと。

困難をくぐり抜けることは、人生に於いてたまにあることではなく、日常にあることでしょう。ですからこの「又一村」の「又」を増やして、「一村」を「十村」とかにしていくことが大切だと思います。地に足を付けて、信頼を地道に積み重ねる努力をして、又々十村になるように、心掛けてまいります。