米中貿易摩擦への懸念で調整してきた中国株ですが、9月18日に風向きが変わってきたように思います。9月18日は、米国が2,000億ドル相当の中国輸入品に対し、24日より10%の関税を、そして来年から25%に段階的に引き上げると発表した日なのですが、税率が当初に見込まれていた25%ではなく10%だったことや、中国が米製品600億ドル相当への報復関税を明らかにしたものの、米国に比べて少ない金額であったことから、米中貿易摩擦はピークを過ぎつつあるとの見方が市場心理を軽くして、中国本土株も香港株も株価は後場から大きく上昇したのでした。

これまでも何度か悪抜け感から株価が反発したことがありましたが、その都度、トランプ大統領からの新たな発言(追加の関税を検討等)が伝わり、相場の腰が折られてきました。しかし今度こそ、本当の上昇転換になるのではないかと期待しています。すでにトランプ大統領は残りの全輸入枠に対しても関税を掛ける準備があると発言していますので、基本的には全てのカードを出し切ったと思います。たとえ残り全部に追加関税が実施されても(その可能性は低いと思いますが)、そして、貿易戦争が(市場で)予想されているように長期化したとしても、すでに大方、株価には織り込まれているため、9月中旬につけた安値以上に大きくは下がらないと思います。むしろ今後は、残りの輸入枠に関税が掛けられることもなく、もしかすると中間選挙後にこれまで実施した関税を撤廃するなど、逆方向に動く可能性もあり、市場の想定する貿易戦争の長期化はない、というポジティブ・サプライズになる方に注目すべき段階に入ったと思います。

そしてもう1つ注目すべき点は米中貿易摩擦によって経済が失速しないように中国当局が財政拡大について矢継ぎ早に手を打っている点です。中国当局は一段と積極的な財政政策を推進する意向を示しており、法人減税を実施しています。さらに、関税を度々引き下げて企業や消費者の税負担を軽減。そして、年5兆円規模の個人所得税の大型減税策も発表し、これらが消費者の購買力を高め、内需で外需減少をカバーしようとしています。このような形で中国経済の底割れは無いとする見方が拡がり、世界的にリスクオンとなり、円安・日本株高にもつながっていると思います。

以上、中国株は概ね底を打ったと思われる地点にあると思います。株価は大きく下がってきているので割安感は十分です。今後、徐々に株価は回復していき、何かポジティブ・サプライズが発生すれば、その時は株価が大きく上昇する可能性を期待できると思います。

コラム執筆:戸松信博

(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)