・18年始にかけ史上最高値を更新した市場は、米国株式に加え、世界の債券や住宅価格等あらゆる資産クラスに及ぶ。商品市場は過去最高には及ばないが、1月3日迄過去最長の14連騰。

・しかし、資産の中にはファンダメンタルズ(本源価値)がさほど上昇していないものもある。特に、一部地域の住宅価格、仮想通貨、恐らく債券には過熱感。米株も企業利益を上回る上昇。

・投資家がリスクを好む限り、市場に過熱感があっても資金は逃げにくいが、何かのショックが勃発すれば過熱感のある市場から資金が流出しうる。当面リスクオン・モードが続きそうだが、年後半は、政治・地政学リスク等から、日本株、欧州株、商品市場等を選好したい。

世界中で「史上最高値更新」

2017年末から18年始にかけて、あらゆる資産クラスが過去最高値を更新した。過去に例をみない金融緩和と、世界金融危機から完全復活、政治的安定感が背景にあるとみられる。
世界の先進国と新興国を合わせた平均株価指数は、17年18年始も過去最高を更新して始まっている(図表1)。

gmw20180105_1.gif

史上最高値を更新している最大の市場が米国株であるが、加えて、インド、タイ等のアジア、英国、ドイツ、ブラジル、カナダ等、世界各地の株式市場で軒並み市場最高値か、またはその近辺で推移している(図表2)。

gmw20180105_2.gif

更に、株式市場の他、債券の総リターン、同時価総額、住宅価格等も過去最高値を更新している(図表3~4)。新たな市場として、一部の仮想通貨も乱高下を続けつつ、高値を追っている (図表5)。商品市場のインデックスも、過去最高には及ばないものの、これを追うように、1月3日まで過去最長の14連騰を記録している。

gmw20180105_3.gif
gmw20180105_4.gif
gmw20180105_5.gif

ファンダメンタルズに沿った動きか?

しかし、市場によっては、ファンダメンタルズ(資産の本源的価値)がそこまで高まっていないものもある。特に、北欧、ニュージーランド、日本など一部地域の住宅価格には、名目GDP(図表6)や、賃貸した場合の家賃の上昇率等との比較で過熱感がある。社債市場も、今は金融緩和による資金余剰のおかげで企業倒産が極めて低いが、今後の金融政策次第ではシナリオが狂う可能性がある。

gmw20180105_6.gif

株式市場についても、企業利益のトレンドを上回って上昇を続けている市場は過熱感が出始めていると考えるべきだろう。世界的に好調な景気に支えられ、企業の収益環境も良好ではあるが、それでも相対的にやや過熱感が出てきているのは米国、香港などである。半面、日本、欧州主要国の株価は概ね企業収益のトレンドの沿ったものになっている(図表7-1~7-4)。

gmw20180105_7.gif
gmw20180105_8.gif

過熱市場が下落に転じる条件:ショックイベントxセンチメントの悪化~年後半に警戒

市場の過熱感が高まると、ファンダメンタルズとの対比ではなく、他国や類似商品との相対比較や、過去の価格との比較で「高すぎる」と判断されやすくなる。これは、ファンダメンタルズがいまだにはっきりしない仮想通貨も同様である。

投資家がリスク・オンの状態(高いリスクを取れる・取りたいと考えている状態)である限り、仮に価格が行き過ぎであっても、急に下落トレンドに転じることは考えにくい。しかし、仮に何らかのショックが発生し、かつ、その時点で、金融引き締めなどから市場がやや弱気に転じていた場合、ほぼ確実に、過熱感のある市場から順に資金が逃げる。

実際、2007年のサブプライム問題発生時も、、米国の利上げ開始から丸3年が過ぎ完全に正常化したとき、ニューセンチュリーやカントリーワイドといった住宅金融大手の経営難が報道されたことが株式や社債市場の下落の発端となった。

現在、投資家のリスク選好度は高く、大崩れのリスクはどの市場もそれほど高くない。しかし、年後半は、金融政策の正常化も進み、地政学リスクや米国の中間選挙等の政治リスク顕在化等の可能性もあることから、ファンダメンタルズとの乖離が少ない市場、例えば、日本株、欧州株、商品市場などを選好したい。