こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。企業にとって「配当」とは株主に対する謝意です。株主から見ると、毎年お礼をしてくる会社は嬉しいもの。さらにそのお礼を増やしてくれれば、すなわち「増配」を実施する企業であれば、なおさら嬉しいものです。実は米国には「プロシェアーズS&P500 ディビデンド・アリストクラッツETF」(NOBL)(当社非取扱い)があります。当該ETFは「S&P500 配当貴族指数」との連動を目指します。同指数は、S&P500の構成銘柄のうち25年以上連続して増配している株式のみを組入れ対象としています。同指数の組入れ企業は現在53社です(3月31日現在)。指数の規定上、年次見直し時の指数の構成銘柄は最低40社となっています(仮に25年以上連続で増配している銘柄が40を下回る場合は、20年以上連続で増配している銘柄を、配当利回りの高い順に40銘柄になるまで追加します)。
また、同指数最大の特徴は、均等比率型である点です(文字通り、組入れ企業を均等に保有するわけです)。では、同指数には一体どんな企業が組入れられているのでしょうか。マコーミック(調味料メーカー)、S&P グローバル(金融サービス)、W.W.グレインジャー(資材メーカー)、シンタス(ユニフォームレンタル会社)が挙げられます。W.W.グレインジャーは、工業用の間接資材販売で全米最大手です。45年も連続増配を続けています。さらに、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(穀物メジャー)や、ジェネラル・ダイナミクス(重機械メーカー)、エコラボ(水処理、衛生サービス)、ホーメルフーズ(加工肉)、アフラック(保険会社)なども組入れられています。同指数を「セクター別比率」で見ると、生活必需品24.5%、資本財20.4%、一般消費財11.7%、ヘルスケア11.2%、素材11.1%となっており、生活に密着した業種が多いことが分かります(3月31日現在)。

実は、国内市場に「S&P500 配当貴族指数(課税後配当込み)」との連動を目指すETNがあります。「NEXT NOTES S&P500 配当貴族(ネットリターン) ETN」(2044)です。2044はETNであるため、実際に株式を組入れるわけではありません。当該ETNの発行者、ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンス・エヌ・ブイが、S&P500 配当貴族指数(課税後配当込み)との連動を約した「債券」を発行しており、ETNはその債券を保有します(ETNのNとはNOTE(債券)のことです)。したがって、ETNは発行者の信用リスクを負うことになります。
また、ETNは基本的に分配金を出しません。ETNには満期が存在するのも特徴です(2044の場合、満期は2034年となっています)。最後に、日本株式にも「配当貴族指数」はあります。それが「S&P/JPX 配当貴族指数」です。同指数は、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄のうち、10年以上連続増配しているか、安定した配当を維持している40~50銘柄から成ります。同指数との連動を目指すETFに「One ETF 高配当日本株」(1494)があります。増配と高配当は必ずしもイコールではありませんが、長く安定的に利益を出せる企業のみが増配を続けられることは確かでしょう。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。