北京を初め、中国の主要都市で急速に広がったレンタサイクル(バイクシェアリング)のサービスについては、本コラムで何度かご報告しております。

任意の場所で利用し乗り捨てができる利便性の高さから、市民の足としてすっかり定着した一方で、利用者のモラルに起因する不適切な放置や車両の破損、また事業者が利用者から集めた保証金の返金遅延など問題も頻発しており、各地方政府はレンタサイクルの事業者及び利用者に対する規制を強化しつつあります。

 

北京では、路上に置かれ利用に供されている自転車が220万台に達しており、これは需要を20万台上回っているそうです。

利用者にとっては、いつでもどこでも自転車が利用可能であることが重要ですので、事業者は自ずと多くの自転車を投入し、競合他社に対し利便性で優位に立とうとします。その結果、一部の地域では自転車が路上にあふれて歩行者の通行を邪魔する事態にもなっています。

 

昨年秋頃までは、北京ではMobike(自転車はオレンジ色)とOfo(同黄色)の大手二社を筆頭に、合計十社ほどが赤、水色、黄緑色やレインボーカラーなど様々な自転車を投入し、百花繚乱の様相を呈していたのですが、大手二社に次ぐプレゼンスを見せていたBluegogo(同青色)が経営に行き詰まるなど下位の事業者の淘汰が進み、今ではほぼ二社に集約された形になっています。

寡占化が進めば、その後に待ち受けているのは利用料金の引上げなどサービスの改悪ですが、今のところそのような動きにはなっていないようです。

生き残った大手二社が、残存者利潤を享受しつつ、互いに切磋琢磨することで、さらなるサービスの向上を図るよう、期待したいと思います。

 

北京市政府は、レンタサイクル事業者への規制と監視を強化する方向で動いており、例えば自転車の台数を適切にコントロールできず、是正措置も取らない事業者には、最高5万元(約85万円)の罰金を科すとしています。

各事業者には、提供できる自転車の台数に上限を課し、厳守を求めます。

タクシーの「総量規制」に似たものがありますが、レンタサイクルの場合、規制を設けませんと路上にあふれた自転車が邪魔になるという切実な問題がありますので、やむを得ない措置ということができます。

また、利用者から収受した保証金の管理と、解約時の返金についても適切な運用を求めています。

 

今のところ、MobikeとOfoの両社は、市政府の規制強化の動きを歓迎しています。他の事業者にとっての参入障壁が高くなり、両社の地位がより安泰になるのですから、当然とも言えるところです。

 

中国では、都市部のインフラとして定着した感のあるレンタサイクルですが、利用者のモラルやマナーなどを含め、問題はまだ解決したとは言えない状況です。

Mobikeが札幌市でサービスを開始するなど、大手は日本を含め海外での事業展開にも積極的ですが、中国で生じている問題を踏まえ、また各国の事情も勘案し、それぞれの地で市民に歓迎されるよう努めて欲しいと思います。

 

今年もレンタサイクルについてはいろいろ話題が尽きないと思わされたニュースでした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

 

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト