世界一の人口を擁し、経済成長が続く中国では、国内あるいは海外への旅行の需要が拡大し、関連業界は好況に沸いています。

万里の長城やパンダ、チベットやシルクロードなど豊富な観光資源は大変魅力的で、外国からの訪問者数も増加を続けています。

中国政府の国家旅遊局(日本の観光庁に相当)は、このほど国内外の旅行客の動向をまとめ、データを公表しました。

中国人の海外旅行(アウトバウンド)客が増加しているとの話題が頻繁に報じられますが、国内旅行客や海外から中国への旅行(インバウンド)客も順調に増加しており、消費額も増えているという結果になりました。

昨年2017年の国内旅行客は、累計で50億人を越え、前年2016年から12.8%の増加となりました。

一人の中国人が年間4回近く国内旅行をしている計算になります。

近場への旅行を含めればあり得ない数字ではないようにも思えますが、「国内旅行ですら夢のまた夢」という貧困層もまだ多くいますので、伸び率とあわせ、市場規模と成長可能性が膨大であることが分かります。

海外から中国への旅行客は、2017年に1.39億人、前年比0.8%の増加にとどまりましたが、旅行業界が計上した売上は同2.9%増になったほか、ホテル、レストラン等関連業界の売上も順調に伸びているそうです。

旅行業に関する研究機関である中国旅遊研究院の幹部は、2018年のインバウンド客の消費について、昨年から5%増加すると予想しています。

訪日中国人観光客の嗜好が、食事や買い物など「モノ消費」からレジャー、体験などの「コト消費」にシフトしていると言われますが、国内旅行でも同様の傾向が見られるそうで、今後は景勝地や歴史的な文化施設に加え、上海ディズニーランドのような娯楽、レジャー施設も有望と見られています。

経済成長が続き、所得が増加すれば、中国人の旅行需要がますます増えると見込まれます。

また、観光地などでは、国内旅行客が大多数のため、これまで外国語対応等、外国人客へのサービスが必ずしも十分でないところが見られましたが、これが改善されれば、外国人客もさらに増えることが考えられます。

中国の旅行業界、また関連業界ともに、見通しは明るいものと思われます。

北京ではホテル、レストランなどを含め、外国人が満足できる水準のサービスがまずまず充実しているのですが、地方ではこのあたりがまだ遅れており、数少ない施設では「外国人価格」と思われるような高額な料金設定が見受けられます。

また、春節や10月の国慶節(建国記念日)など大型連休には大変な混雑となり、正直、私などは国内旅行に及び腰になってしまいます。

外国人旅行客向けのサービスについては、まだ改善の余地がありそうです。

北京では、現在空港の発着枠の制約で、格安航空会社(LCC)がほとんど就航していないのですが、来年に予定されている新空港の開業後は、国内あるいは日本への路線を含め、LCCの就航が増えるものと期待されます。

中国人の国内旅行やアウトバウンドが主な需要になりそうですが、外国人の北京訪問も増えるのではないでしょうか。

また一つ、中国の成長ぶり、経済の活況を確認させられる話題でした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト