いよいよ2017年の締めくくりです。振り返れば、今年はドル/円が値動きの非常に乏しい状態を続け、ある意味では市場関係者・参加者泣かせの年となってしまいました。ことに3月下旬以降のドル/円は、いわゆる「フラット型」の保ち合いを長らく形成し、そのレンジ幅は大よそ108-114円と非常に限られたものでした。

このレンジ内での値動きをドル/円がスタートさせてから早9カ月が経過し、そろそろ上あるいは下へ放れる新たな局面を迎えてもおかしくなさそうなものではありますが、実際にその前兆ではないかと思われる動きが一部で見られ始めていることも事実であり、当面はそうした点を一層注意深くチェックして行きたいところです。

まずは、毎度お馴染みの「月足」に注目ということになるのですが、これもお馴染みの31カ月移動平均線(31カ月線)が現在113.06円に位置しており(下図参照)、同線を月足の終値で多少なりとも上回る可能性は十分にあるものと見られます。

20171227_tajima_graph01.png

仮に上回ったところで、その上方には115円の節目や一目均衡表の月足「雲」上限の存在があり、そう易々と上値を拡げて行けるわけでもないのでしょうが、過去に幾度も重要な役割を演じてきた31カ月線をとにかく上抜けることが、新たな局面を迎えるための第一歩になると思われます。

加えて、あと3ヶ月ほどが経過する頃までには月足の「遅行線」が再び26カ月前の月足ロウソクが位置するところを上抜ける可能性が高く、そうなると少し長い目で大いに上方視界が開けてくるようになるものと見られます。もちろん、この月足の「遅行線」というのも過去に大事な局面で幾度も重要な役割を演じてきました。

次に、本欄の 11月29日更新分で触れたレジスタンスラインに再注目します。これは2015年6月高値と2016年12月高値などを結んだ直線のことであり、直近では11月6日に114円台後半の高値をつけに行った場面においても同ラインがドル/円の上値を押さえる役割を果たしました。

実のところ、同ラインは2016年6月安値や今年9月安値を結ぶ直線とで形成する三角保ち合い(トライアングル)の上辺とみることもでき、このトライアングルは既に相当煮詰まってきています。この上辺は現在114円台前半あたりの水準まで低下してきており、それを上抜けるのはもはや時間の問題ではないかと思われます。同水準を上抜け、さらに直近(11月)高値=114.73円をもクリアに上抜ければ、いよいよ前述した「フラット型」の保ち合いレンジからも上放れたとの感触が強く得られることとなるでしょう。

思えば、11月6日に直近高値をつけた後に一旦下押すこととなったドル/円は、11月27日に110.84円の安値をつけて下げ止まり、反発に転じています。つまり、今回は4月安値(108.13円)や9月安値(107.32円)をつけた時とは違って、保ち合いレンジの下限をあらためて試すような動きにはなっていません。

まして、9月安値から11月高値までの上げに対してちょうど半値押しの水準で下げ止まったところからしても、市場には「ドル/円をそろそろ保ち合いレンジから上放れさせよう」という"意志"のようなものがあるように筆者には感じられます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役