前回更新分の本欄で、当面のドル/円の下値について「一目均衡表の日足「雲」上限や200日移動平均線(200日線)、89日移動平均線(89日線)などといった複数の節目が当面の下値サポートとして意識される可能性は高い」などと述べました。しかし、実際には先週22日のNY時間に公表されたFOMC議事録の内容を受け、あえなく同日のドル/円の日足ロウソクは長めの陰線を描きながら下値サポートとしての役割を期待された複数の節目を次々に下抜けることとなってしまいました。

その後、ドル/円は111円処で下げ渋る展開となっているわけですが、考えてみれば111円処というのは今年3月下旬あたりから長らく形成されている「フラット型の保ち合いレンジ(107円台半ば~114円台半ば)」のちょうど中心にあたります。当然、ここは重要なチャート・ポイントの一つとして意識されるところでしょう。

このたび、そんな111円処まで下押してきたドル/円は一つの正念場を迎えていると言うことができるでしょう。それは、仮に同水準をクリアに下抜けた場合には、再び保ち合いレンジの下辺あたりまで下押す可能性を考慮しなければならなくなるということです。もちろん、逆にドル/円が111円処で踏み留まって上方に切り返す動きとなった場合、今度は保ち合いレンジの上辺がやはり一つに意識されるところとなるでしょう。

それにしても、この保ち合いレンジのなかでの値動きというのは、一体いつまで続くのでしょうか。振り返ると、11月6日には一時114円台後半の水準まで上値を伸ばす場面があり、ついに「レンジ上辺を突き抜けて保ち合いを上放れるか」と思われる瞬間もありました。ところが、後に再び保ち合いレンジのなかに潜り込み、そこから一気に111円処まで値を消すこととなったのです。

実のところ、ドル/円の11月6日高値が位置するところには、下図に見るように2015年6月高値とその後の目立った高値を結ぶ強力な長期レジスタンスラインの存在があり、結局は同ラインによって見事に上値を押さえられることとなったのです。つまり、今後ドル/円が本格的な上昇局面に突入して行くためには、このレジスタンスラインを上抜けて、さらに11月6日高値=114.73円をクリアに上抜けることが必要ということになります。

なお、もともと筆者は昨年6月のブレグジット・ショック時の安値から昨年12月高値までを「A波」と考え、そのうえで今年9月安値までを「B波」とし、現在は今年9月安値を起点とする「C波」の強気波動のなかにあると個人的に見ています。よって、まずはこの「C波」が前記のレジスタンスラインをクリアにブレイクすることが重要であり、それによって「2015年6月高値からのドル/円の調整は終了し、以降は本格的な上昇局面へ向かう」ということになるものと考えています。

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ドル/円が前記の保ち合いレンジ内での値動きに終始するようになって、早や8カ月もの月日が経過しようとしています。その間、市場関係者や参加者らによる一定の動意に期待する思いはずっと押し込められ、抑圧された状態にありました。よって「そろそろレンジ・ブレイクの動きが見られてもおかしくはない」と見る向きも少なくはないでしょう。

すでに米感謝祭やブラック・フライデーを通過し、今年もまた「年末はドル高」のアノマリーが意識されやすい時期を迎えます。2017年をドル/円が「保ち合いレンジの上方ブレイク」という強気のパターンで締めくくれるのかどうか、大いに注目されるところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役