端的に趣旨を述べると、レポートの表題の通りである。この局面は引き続き慎重なスタンスで臨み、相場の戻りは売りで対処することを推奨する。昨日の東京株式市場で日経平均は3日続伸し、底堅さが見られるようになってきた。実質年度替わりから1,000円も下げればさすがに調整一巡感が出ても不思議ではない。しかし、「今週のマーケット展望」で述べた通り、

① 北朝鮮を巡る緊張が緩和しておらず、② 米国の経済指標に弱さが散見され、③ 欧州の政治リスクが再び懸念される。

「こうした状態では押し目買いも入りにくい」と僕は書いたが、昨日の東京市場では公的年金と見られるインデックス買いが入ったとの観測がある。東証1部の売買代金は概算で2兆3172億円と、3日ぶりに活況の目安とされる2兆円を上回ったが、それでもわずか13円高である。日経平均は3日続伸とは言え、非常に脆弱性を孕んでいるように感じる。

今週のマーケット展望」では、<ドル円はこの先、1ドル100円まで明確な節目はなく、リスク回避の円高が進む可能性がある。日経平均も18,000円の大台割れが視野に入る>とも書いた。その見方は変わっていない。

フランス大統領選という波乱要素に加えて、4月28日に米国の暫定予算の期限が切れる。オバマケア代替法案を通せなかったトランプ政権の議会掌握力からして、予算をまとめきれないリスクが高い。同日までに本予算が成立しなかったり、暫定予算の延長が認められなかったりした場合、政府機関がシャットダウン(閉鎖)される。市場はこのリスクをまだじゅうぶんに織り込んでいるように思えない。

ゴールデンウィークの最中、5月2-3日にはFOMCがある。政策変更はないが、声明で6月利上げのニュアンスを探ることになる。ここもと出てきた弱い指標がFOMCメンバーにどう影響しているかが注目だ。小売売上高やCPIの弱さについては、こちらのブログを参照してほしい。その後、発表されたエンパイア・ステート景気指数(ニューヨーク連銀製造業景気指数)の下振れもネガティブ・サプライズだった。CME FED WATCH では6月の利上げ確率が50%を割れている。今後、6月利上げの確率が一段と低下すれば円高が進行するだろう。決算発表での業績予想も信憑性が薄らぎ、アップサイドのカタリストになりにくい。

戻りは売りで対処されたい。現金比率を高めておけば、買い場はまだいくらでもあると思う。

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チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから