先週30日のドル/円の終値、つまり月足・終値は112.53円で、結果的に113.40円処に位置することとなった31カ月移動平均線(31カ月線)を下回る水準となりました。前月(10月)の月足・終値が辛うじて31カ月線を上回る水準となったため、いよいよ「昨年12月高値(118.67円)からの調整局面が9月安値(107.32円)をもって終了した」との感触が強く得られるのではないかと期待するところもありましたが、それはもう少し先のこととなりそうです。
以前にも本欄で述べたように、ドル/円の月足・終値は今年1月に31カ月線を下抜け、それ以来長らく同線をクリアに上抜けることができない状態にあります。ドル/円が本格的な強気トレンドを再び描き始めるためには、まず31カ月線をクリアに上抜けることが重要であると考えられ、もちろん今月(12月)の終値についても大いに注目しておきたいところです。
ちなみに、ドル/円の31カ月線は現在113.02円に位置しており、足下で市場の期待が盛り上がっている米税制改革法案の年内成立など、きっかけ(材料)一つで31カ月線をクリア・ブレイクする可能性は大いにあると言えます。仮に今後同線を上抜けて、さらに本欄の前回更新分で触れた長期レジスタンスライン(2015年6月高値と2016年12高値を結ぶ直線)をも上抜ける展開となれば、いよいよそこから本格的な強気トレンドが始まる可能性が高いと見ておいていいでしょう。
ときに、月足チャートは他の通貨ペアの値動きの行方を考えるうえでも大いに参考とすることができます。たとえば、下図に見るように豪ドル/円の上値は、このところずっと62カ月移動平均線(62カ月線)や一目均衡表の月足「雲」下限が位置する水準で頭を押さえられる格好になっていることがわかります。
9月には豪ドル/円の月中・高値が一時的に月足「雲」下限や62カ月線を上抜ける場面もありましたが、結局のところ月足・終値では頭を押さえられることとなりました。10月以降は、こうした"上値の壁"を攻略できず、意気消沈したかのような足型になっています。ちなみに、豪ドル/円の月足チャート上では31カ月線が様々な場面で重要な役割を担っていることもわかるかと思います。
もちろん、ユーロ/ドルの月足チャートも実に様々な事柄をこれまでに物語ってきています。やや遠い過去を振り返れば、2008年7月の過去最高値(1.6038ドル)から超長期に渡って下降トレンドを描き続け、そこに下降チャネルが形成されていることもわかりますし、ときに月足「雲」上限あるいは下限が下値サポートや上値抵抗など、様々な役割を果てしてきたこともわかります。
そして今、まさにユーロ/ドルの月足は62カ月線や月足「雲」下限の水準に頭を押さえられる格好となっていることもわかるでしょう。今年8月から先月(11月)まで、ユーロ/ドルの月足ロウソクは実体部分で月足「雲」下限と交錯する状態を続けており、8月と9月の月中・高値は62カ月線に見事に抑えられる格好となりました。今のところ12月の月足ロウソクは月足「雲」のなかに潜り込んだ状態となっていますが、果たして月末までにどのような事柄を物語ってくれるのか、今から楽しみに見て行くこととしましょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役