前回のレポートで、日経平均のBPS(1株当たり純資産)は約1万5750円であり、PBR1倍が底値目途であろうと書いた。先週出演したテレビ番組でも下値は1万5750円と述べた。テレビでそのように語ったまさに当日、自分が提示した下値目途を越えて日経平均は下落した。ツイッターでそのことをつぶやき、文章の終わりに(苦笑)とつけたら、「プロというものが(苦笑)でいいのか。そんな軽い仕事なのか」と批判された。相場が悪くなると途端に僕に対する苦情や悪口が増えるというのは以前からお伝えしている通りだが、今回はその手のクレームがほとんど来なかった。前述のツイッターにしても、批判であって悪口ではない。酷い時は、ホントに罵詈雑言がたくさん来るので、それに比べたら可愛いものである(苦笑)。

というのも、日経平均は取引時間中には1万5500円を下回る水準にまで下がったこともあったが、終値では1万5700円台を割ったことがなかった。円高が加速し、日経平均が1万6000円割れ寸前まで売られている時に、「下値は1万5750円」とずばり言い切って、その結果終値で1万5700円台を維持できれば、それは上出来と認めてもらったのだろう。

2月12日に1万5000円割れまで下がったときもPBR1倍割れ、そして今回もPBR1倍割れまで売り込んだ。これでダブルボトム、底値は確認できたと思う。悪材料は織り込んだだろう。円高によって今年度の業績が減益になる恐れは覚悟して、さてここからアップサイドの要因を探ろうという用意はできた。但し、ここから上値を買うには実際に材料が出ないと難しい。まずは下旬の決算発表で業績を確認しつつ、日銀の追加緩和の有無、そして内容、それからサミット前にまとまる景気対策などである。

外部環境としては中国のGDP発表で短期的な底打ち感が出るかどうか。そしてすでに始まっている米国の1-3月の決算発表も注目だ。トムソンロイターの調べでは、主要500社の1株当たり利益は前年同期比7.6%減。3四半期連続の減益となれば2008年のリーマン・ショック後の金融危機以来だ。その内訳は、原油・資源安でエネルギーセクターが振るわないことと、市場の混乱で金融業も9%減益の見込みだが、当然と言えば当然の結果でサプライズはない。悪い決算発表を受けても米国株が大崩しなければ、今回の1-3月が米国企業業績のボトムになるとの見方が増えるだろう。世界の株式市場を「リスクオン」モードに導くことになる。

株式相場はPBR1倍の1万5700円台を下回らなかったことで、底値到達感を自ずと醸成して反発した。これを自律反発という。メディアの書きぶりをみると、「所詮、自律反発の域をでない」と否定的に捉える向きもあるが、自律反発ほどすごいことはない。なにしろ何の材料も出ていないのに、相場が勝手に自然と反発するのだ。相場のことは相場に聞け、というが、その答えを相場が自ら示してくれている。

とりあえず底は入れたが短期的には上値抵抗ラインで跳ね返されるかもしれない。日経平均は一目均衡表の雲の下限に頭を抑えられそう。そこを抜けて雲の中に入っても下降してくる25日移動平均が上値の重石となりそうだ。