日本の大型連休と5月7日に行われた仏大統領選・決選投票を通過し、ことにドル/円のチャート・フェイスから受ける印象は一変することとなりました。まず再確認しておきたいのは、ドル/円の月足チャートにおいて4月の終値が一目均衡表の月足「雲」上限よりも上方に位置することとなったうえ、4月の月足ローソクが長めの下ヒゲを伴う格好になったことです。

かねてドル/円の月足「雲」上限は、ときに上値抵抗として意識されたり、ときに下値支持として意識されたりしてきたわけですが、今回も昨年11月と同様に下値サポートとしてしっかり機能することとなりました。また、現在115円付近には31カ月移動平均線(31カ月線)が位置しており、当面は同水準が一つの目安として意識される可能性が高いと見られます(下図参照)。

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次に、ドル/円の週足チャートに目を移しますと、本欄の4月26日更新分でも触れたように、4月半ばに62週移動平均線(62週線)に下値を支持されて反発し、先々週と先週の週足ローソクはともに一目均衡表の週足「雲」上限と31週移動平均線(31週線)をクリアに上抜けることとなりました。つまり、月足と週足の双方のチャート上でドル/円の強気シグナルが確認できるわけです。

さらに、日足のチャート上でもドル/円の強気の流れはハッキリと確認できます。今週の週明け以降、89日移動平均線(89日線)と日足「雲」上限をクリアに上抜ける展開となっており、ほどなく89日線は上向きに転じてくる状況となっています。

なお、昨日のドル/円は一時114.33円まで上値を伸ばしたものの、執筆時までには一旦値を下げ、目下は113.80円前後の水準に留まっています。この113.80円処という水準は3月10日高値から4月17日安値までの下げに対する76.4%戻しにあたり、同水準は一つの節目として意識されやすいところであると思われます。

次に節目として意識されやすいのは、一つに昨年12月高値から今年4月安値までの下げに対する61.8%戻し=114.65円、そして心理的節目の115円ということになると思われますが、やはり114円台後半の水準まで上昇した場合には、目先の高値警戒感やスピード警戒感、米政権側からのけん制警戒感などもあって少々上値が重くなりやすいものと見られます。

周知のとおり、目下の市場では米6月利上げ期待が強まっていることに伴うドル買い優勢の流れが続いています。仏大統領選において中道派で「親EU」のマクロン氏が勝利したことの安心感に伴うリスクオンのムードもドル買いを誘っています。また、仏大統領選後にユーロが頭打ちの動きとなったことで、ヘッジファンドなどがユーロ買いのポジションを手仕舞っていることもドル優勢の一因であると見られます。

ただ、一頃ほどの緊迫感はないものの、なおも北朝鮮リスクへの警戒は完全には解けません。今月25日に石油輸出国機構(OPEC)の会合を控え、原油(先物)価格の行方も気掛かりになってきました。そうした点も踏まえたうえで、当面、ドル/円がどこまで上値を伸ばせるか、慎重に見定めて行きたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役