5月26~27日、先進7カ国(G7)による主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が三重県で開催され、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの首脳らが集まった。リーマンショック後、新興国の台頭を背景に、中国、インドなども含めた20カ国によるG20サミットの存在感が高まっていたが、今回のG7サミットでは、日本が議長国を務める中、先進国によるサミットとしての成果を挙げられたのではなかろうか。この点について、世界経済の視点から3点ピックアップしたい。

第1は、世界経済を底上げするため、金融政策、財政政策、構造政策を総動員することに合意が得られたことである。近年、新興国の成長が減速しており、世界経済の不透明感が増している。新興国の勢いに陰りが出ている今こそ、G7がリーダーシップを発揮し、世界経済をけん引する役割を果たすことが求められている。

第2は、先進国が主導する自由貿易体制の構築について、方向性が確認されたことである。G7は、環太平洋経済連携協定(TPP)、日EU経済連携協定(EPA)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)といった、いわゆるメガFTAの当事国であり、これらに立脚した経済圏を世界に広げていくことになる。これらの通商協定は幅広い分野で新たなルールを構築するものであり、それが将来的にグローバルルールに昇華する可能性を秘めているという点で意義深い。

第3は、質の高いインフラ投資の推進が打ち出されたことである。今回のサミットでは「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」が発表され、これに沿った形でインフラ投資を進める努力がなされることとなった。世界では将来にわたり、膨大なインフラ需要が見込まれている。そうした需要に対し質の高いインフラを提供していくことは、先進国の責務ともいえる。

こうした成果を挙げたG7サミットの場は、今後も先進国によるガバナンスの枠組みとしての使命を果たし、世界経済をリードしていくことが期待される。来年のG7サミットは、イタリアのシチリア島で開催されることが決まった。ちょうど今年は日本とイタリアが修好通商条約を結んで150周年。この節目の年にG7サミットが日本で開催され、イタリアにバトンが手渡された。風光明媚な伊勢志摩からシチリアに場所を移しての来年のサミットでG7がどのような議論を展開するのか、想像を膨らませていきたい。

コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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