アフリカ経済の高成長が目立っている。国際通貨基金(IMF)によると、サブサハラ・アフリカの2014年の実質GDP成長率は6.0%に加速し、地域別では世界の中でトップ・クラスとなる見通しである。経済成長率を国別に並べた場合も、近年では上位国の多くをアフリカ諸国が占める様になった。海外からの視線も熱く、国連貿易開発会議(UNCTAD)発表による2013年の直接投資額は前年比7%増の560億㌦に達している。これまでは資源分野ばかりが注目されがちだったが、成長が投資を呼び込む好循環が生まれており、ビジネス機会が様々な分野に拡大している。

真っ先に挙げられるのが、インフラ分野である。電力を例にとると、サブサハラ地域の電化率は世界の中でも極端に低い。国際エネルギー機関(IEA)によると、新興国平均77%に対し、サブサハラの電化率は32%に過ぎない。電力供給が不十分な状況では新規産業の誘致は見込めず、国民の生活水準の改善もままならない。そこで、民営化を進め、民間資金の導入により電力網を早急に整備する動きがみられる。例えば、ナイジェリアでは2020年までに発電容量を現在の10倍の40,000MW に引き上げる計画であり、ガーナでは2016年までに現在の2,800MWから5,000MWに増設する計画である。電力不足の背景には設備の老朽化、送電インフラの未整備、燃料確保の問題等もあり、設備の運営やメンテナンスにおける事業機会も増えることが予想される。また、インフラ整備の必要性は、電力に限ったものではなく、上下水道や輸送インフラ等にも共通しており、各国の整備計画が軌道に乗れば膨大な需要が期待できる。

農業分野も大きな可能性を秘めている。アフリカでは拡大する人口に対し、農業生産が追いついていないのが現状である。小麦、トウモロコシ、コメ等の主食となる穀物や砂糖が輸入超過となっており、こうした商品では世界貿易の大部分をアフリカ諸国が輸入している。食料の輸入依存は物価の上昇をもたらし、賃金を押し上げる等、相対的なコスト高を招く。そのため、国際競争力においても不利な状況に置かれており、農業の生産性向上は地域にとっての優先課題である。生産性の改善には技術支援と共に、農業機械、肥料、農薬等が必要で、これら資機材の需要拡大余地は大きい。また、食料を十分に行き渡らせるためには農産品の流通網の整備も不可欠だ。

製造業も徐々に発展するとみられる。アフリカではセメントや鉄鋼等の建設資材、自動車等の消費財の多くを輸入に依存している。こうした分野では、国内生産への代替が進む可能性がある。国内産業の育成は経済基盤の強化につながるのに加え、多くの国が悩まされる雇用問題の解決に貢献するというメリットがある。しかし、乗り越えなければならない課題もあり、中でも人材不足は深刻である。世界銀行によると、サブサハラ地域の初等教育の終了者は全体の51%(世界平均:88%)、識字率は62%(世界平均:84%)である。人材育成には時間を要するため、豊富な若年層人口を活かすためにも、長期的な視点に立った教育の拡充を早期に実現する必要がある。

安倍政権は官民合計で3兆2,000億円の資金協力や3万人の産業人材の育成を表明しており、アフリカの開発支援に力を入れる姿勢を見せている。将来的な消費市場としての魅力も大きく、多少のリスクは克服可能と思われる。アフリカに広がるビジネスチャンスに世界中が注目する中、日本企業のアフリカ市場への参入増が期待される。

コラム執筆:井上 祐介/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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