商社等による海外のエネルギーや金属資源権益の取得が続いています。また、中国をはじめ、国家レベルで資源の備蓄や開発投資を積極的に進めている国もあります。各種商品市況は上昇基調にあり、直近で最高値を記録するものもあります。こうした動きをみるかぎり、新興国の経済成長に伴う資源需給のひっ迫や化石エネルギーを前提とする現在の経済構造がしばらく続く見通しです。当然ながら、多くの資源を海外に依存する我が国は大きく影響を受けます。
しかし、長い目でみると、状況が変わる可能性があります。そのきっかけのひとつが海底資源です。日本の周辺海域には天然ガスや鉱物資源が豊富に存在することが分かっています。そのうち、エネルギー源として注目されるのがメタンハイドレートです。メタンハイドレートは水の分子にメタン分子が取り込まれたシャーベット状の結晶で、水深1,000メートル程度の海底に分布します。一説には、日本の排他的経済水域や大陸棚には日本の年間天然ガス消費量の約100年分の埋蔵量があると言われています。他にも、南鳥島付近の海底にはコバルトリッチクラストと呼ばれるコバルトや白金を多く含んだマンガン酸化物が岩盤を覆っています。また、沖縄近海や小笠原諸島周辺には海底から噴出する熱水が冷却されて出来た海底熱水鉱床があり、金、銀、レアメタル等が含まれています。
去る3月23日、独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)の新しい海洋資源調査船「白嶺」が完成し、進水式が執り行われました。2012年から鉱物やエネルギー資源の調査を実施し、10年程度での商業生産を目指しており、今後、話題にのぼる機会が増えるかもしれません。正確な埋蔵量の把握、回収方法の確立、輸送や精錬コストを含めた経済性の検証、環境面や法整備等、まだまだ課題は山積みですが、商業生産が実現すれば我が国の資源需給は大きく変わります。
次世代のバイオ燃料の開発も注目されます。例えば、藻類を培養・精製し、軽油等の燃料を生産する研究が大学や企業で続けられています。藻類は光合成を行うため、太陽光を用いて水と二酸化炭素からエネルギーを作り出す「クリーン・エネルギー」として期待を集めています。技術的なハードルは決して低くないものの、面積当たりの収穫量が高く、増殖が早い種を見つけ出し、効率的で安定した生産方法が確立された場合、我が国のエネルギー自給に大きく貢献する可能性があります。
この様な日本をとりまく環境、研究開発を鑑みると、将来、我が国の海外へのエネルギー資源依存は大きく変化するかもしれません。
しかし、膨大な資源を消費し続ける現在の我々の生活基盤は限界にきており、省エネをより積極的に推進する必要に迫られています。ヒートポンプを用いて大気熱を利用して湯を沸かすエコキュート等、省エネ家電や機器は我が国が得意とするところです。年間でのエネルギー消費量をゼロにするZEB(ゼロ・エミッション・ビル)の様な建物や地域単位での省エネ技術等の開発や利用もますます進展することが期待されています。
コラム執筆:
井上祐介/丸紅株式会社 丸紅経済研究所
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