トランプ米大統領がロシア側に機密情報を漏えいしたとする、「ロシアゲート」疑惑が警戒感を強め、金融市場は一気にリスクオフに転じてしまいました。17日のアメリカのダウ平均は今年最大の下げ、10年債利回りの低下、ドル安・円高、恐怖指数といわれるアメリカのVIX指数は一日で46%も上昇しました。

北朝鮮の度重なる挑発行動に対しても、ナスダック指数を中心に世界の株式市場は史上最高値ムードを続けてきましたが、有名な相場格言「セル・イン・メイ(5月に株を売れ!)」を意識せざるをえない状況になっています。

ドル/円相場は4月下旬以来の一時111円割れ。トランプ米大統領に対する弾劾から辞任へはすぐにはないにしても、今後も疑惑に対する懸念は色濃く残るでしょうし、短期的には警戒感を解くようなビックイベントもなく、しばらく不安定な相場展開が予想されます。ただ、ドル/円相場は4月17日に付けた108.13円の安値から、直近高値114.37円まで6.24円も円安に動いています。何が言いたいかというと、昨年12月に付けた118.66円からの円高局面では最大の円安方向への戻りとなったことで、昨年12月からの主たる円高トレンドはいったん終了した可能性が高いのです。この足元の急速な円高は遅かれ早かれ、二番底(直前の安値を下回ることがない短期的な安値)試しで予想されたことだと感じています。つまり、トランプ騒ぎは短命に終わることが予想されます。重要な下値のテクニカルポイントは、昨年のトランプショックで一時的に付けた101.20円を起点に、4月安値108.13円を通る右肩上がりの下値支持ライン上になりえる110円前後となります。4月安値のときと同じく、緩やかに上昇を続ける200日線(現在は109円台半ば)なども意識できるかがポイントになります。

アメリカの10年債利回りは2.3%台から一時2.21%まで低下しましたが、これは仏大統領選挙第1回投票前の水準です。単純に比較はできませんが、当時の10年債利回り水準でのドル/円相場は108円前半~109円前半で推移していました。ですので、少し下値を切り上げる可能性があります。ゴールデンウィーク前あたりからGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)やファンドがドル/円を買っていました。おそらく、110円あたりからは再びそういった思惑が心理的なサポートになるでしょう。

日本株にとって重要なのは、なんといってもアメリカの景気です。トランプ騒ぎという名のもとで感染的にリスクオフになりかけていますが、押し目買いのタイミングは5月末から6月上旬とみています。6月2日に発表されるアメリカの5月雇用統計前後までの経済指標がカギになります。市場予想を上回る景気指標になっていけば、アメリカの景気に対する疑心暗鬼が一時的にとかれ、長期金利は多少上昇に向かうでしょう。連動性が高い日経平均株価の変化日も6月2日前後に到来しますので、下げ止まりのポイントになるかどうかに注目です。

日経平均株価は、25日線(1万9,146円 17日)が75日線(1万9,196円 同)を上回るゴールデンクロス(強気サイン)が予想され、株価が下落するケースでも押し目買いの判断で良いと思います。4月17日安値(1万8,224円)からの上昇過程では、チャート上に「マド(ローソク足の間の空間、「空」ともいいます。)」が5つ形成されました。相場秘伝で有名な「酒田五法」では、「マド」3つをもって「三空踏み上げ」といい、そろそろ上げ相場が一服するサインと判断します。4月17日以降は「五空踏み上げ」でも、北朝鮮が弾道ミサイルを打った翌日も大きく下げませんでした。理由は以下の要因もあります。
ここから注目したいのは、前回ご案内しました1万9,000円~1万9,500円にある120兆円の壁です。18日の急落で早くも到達しましたが、1万9,000円~1万9,500円には過去の取引で積み上がった累積売買高が120兆円程度存在します。17日現在では134兆円まで増えています。その水準よりも株価が安ければ、上値が抑えられる水準だったのですが、今は大逆転が起き、株価の方が高くなっているため、今度は下値をサポートする水準に変わった可能性が高いのです。なので、短期的に下げても、1月から長く続いたボックスレンジの中心付近にも相当する、概ね1万9,000円-1万9,200円まで下げれば目先的には十分ではないかと考えています。

では、相場が出直ってくる際の物色はどう考えればいいのでしょうか?答えは意外と簡単で、最も投資家に安心感を与える、銀行株や自動車株が上昇することです。最近、日経平均株価が2万円にあと2円まで迫る過程で、指数をけん引しきれなかった業種になるのではないかと思います。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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