ドル/円相場が1ドル=105円台半ばにある強い「節目の価格帯」を上回り、円安が加速気味の展開となっています。最近発表された11月8日現在の投機筋による円買いポジション超過は3万1,956枚程度です(シカゴのマーカンタイル取引所で取引されている先物ポジション)。これはなお、大幅な円買いポジションがある状態なのです。確かに、米大統領選挙を通じて大きく円安方向に動きましたので、今週末に発表される円買いポジションは大幅に減少しているかもしれません。ただ、こんなにスピードをともなう円安局面で、損失覚悟のポジションの解消(円売り)を積極的に判断できるとも思えません。ましてや、「トランプ当選=円高」と思っていた投機筋は、この円安の動きにまだ疑心暗鬼です。
通常、相場がピークを打つときは、相場と同じ方向に多少なりともポジションが傾くものです。株価上昇なら買い残超過、円安なら円売りポジション超過といった具合に。なので、円買いポジション超過から円売りポジション超過に変わっていくとすれば、円安余地はまだ残っていると考えられます。テクニカル面などからみると、112円台半ばあたりまではあるのではないかと思います。

トランプ氏が当選前に掲げていた政策がすべてできるかどうかは別にして、減税や規制緩和は、景気への影響を通じて株価に織り込まれます。他国と直接的に関係がある自由貿易協定をめぐる外交政策問題も、そもそも人種の違いや考え方が違うため、難しい問題に変わりありません。来年迎える米国の債務上限問題なども共和党主導で敏速に進めることが可能だと思いますが、共和党の重鎮であるマケイン上院議員やライアン下院議長などが選挙中、トランプ氏への支持を取り下げたことが尾を引く可能性はあるでしょう。
これらの問題は、いずれ市場が織り込んでいくことになるのですが、その前にまず警戒しなければいけないのは、短期的なおカネの流れです。少なくとも以下の「3つのリスク」を警戒しなければいけないと思っています。1)米長期金利の急上昇で新興国からの資金流出が加速し、新興国の通貨や経済に大きな悪影響を及ぼす、2)米長期金利上昇でたくさん米国債を持っている中国の外貨準備高が中国のわがままでどのように変化していくか、3)米国を中心に先進国の債券市場に混乱が起きないかどうか、です。
債券から株式への「グレートローテーション」(安全資産からリスク資産へ移る)があるといえども、金利上昇が緩やかならいいのですが、スピードがあまりにも早いと、あとで待ち構える、株・債券・為替市場の反動(混乱)を経験しなければならなくなります。

短期的に気になるポイントとしては、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げがあります。12月のFOMCまであと約1カ月あります。
前回指摘したように、リスクオンになっている株式市場を横目に利上げがやりやすくなったような気もします。しかし、もし足元のリスクオンの反動や新興国からの資金流出が加速する状況になった場合、利上げできなくなることだって、ありえる話です。今、市場が予想する12月の利上げ確率は10日現在で81%です。実は、大統領選挙の結果を受けても、利上げ観測にほとんど変化はありません。これはなぜでしょうか?
このことを探る意味でも、目先の注目イベントは、11月17日にあるイエレンFRB議長の上下両院での合同経済委員会での証言です。もちろん、大統領選挙後ではじめての公式発言となるため、どのように市場との対話をこなしていくのかに注目です。もし、そこで上手く乗り切ったとしても、FOMCあたりから、リスクオンの流れが短期的に変わることはありえるでしょう。

日経平均は、今年2月安値と6月安値とで「二番底」が完成し、上値が一段と見込める局面に入ってきました。前々回、もしそうなると当面の上昇余地は18,500円処まで広がると書きましたが、まさにトランプショックに対する「倍返し」の上昇と一致します。米大統領選挙の直前に付けた10月28日の終値(17,446円)から急落した9日終値(16,251円)までの下落幅1,195円を、高値に加える計算をすると、18,641円になります。
この上値である18,640円は、このままいけば12月上旬ごろには達成するのではないかと思います。ここ数年間は11月限のSQ(特別清算指数)算出日が通り過ぎると、12月上旬までは上昇しやすい傾向があるためです。今年のSQは先週の11日でした。
過去をさかのぼると、2015年11月限のSQは19,496円でしたが、2万円まで上昇したあと、12月1日を起点に下げました。また、2014年のSQは17,549円となり、18,000円近くまで上昇して12月8日を起点に下げました。2013年のSQは14,013円となり、15,800円近くまで戻して12月3日を起点に下げたあと、12月30日まで一段高となりました。2012年のSQは8,745円となり、アベノミクス相場の起点に近いタイミングになりました。
これらを考慮すると、今の動きも半分ぐらいは理解できそうです。筆者は、株価の講演会・勉強会で株価の動きを物にたとえることをよくやりますが、今回の9日の急落と10日の急騰の動きを例えると、トランプさんだから、「トランプリン」じゃなかった、トランポリンのようなジャンプ台を作った感じにみえます。今年の株価上昇は例年と勢いが違いそうだ、ということで今回の終わりにしたいと思います。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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