シカゴ日経平均先物の投機筋のショートポジションが最近話題になりました。要するに、ショートとは売り、ポジションとは建ち玉、といったところでしょうか。その売り建ち玉が買い建ち玉を大幅に上回っている状況が続いているのです。円換算でおおよそ2800億円の売り持ち超とか?売り建ち玉が将来の買いの要因に、買い建ち玉とは将来の売りの要因となるわけです。売り建ち玉よりも買い建ち玉の方が多ければ、理論的には将来の買い需要が多くなり、上昇が見込めるといった流れなのですが・・・。

 どんな相場でも、最後に上に伸び切った状況をつくるのはカラ売り(売り建ち)の買い戻しです。そういう状況における買い戻しは損失覚悟の決済ですから、評価損に耐え切れず建て玉を決済することで、自分自身の苦しみから逃れようとする心理状態になるからです。だから、値段関係なくどんどん上を買ってきます。だから最後は急騰する。

 現在、逆日歩銘柄は日証金ベースでざっくり330銘柄程度でしょうか。逆日歩とは顧客が空売りをする場合、証券会社が顧客に株券を貸すのですが、証券会社も証券金融会社から株券を借りてこなければいけません。その証券金融会社の株券が不足した場合、証券金融会社は機関投資家等から調達します。調達コストがかかるため、それが最終的に顧客のコストへとつながっていくわけです。
 逆日歩銘柄が多くなるということは、それだけカラ売りしている人が多いということ。ジリジリ上昇している今の相場では売り方の評価損もさほど目立ちませんが、徐々に評価損は拡大してきます。評価損以上に金利も余分に支払うことになります。そのうち耐えられなくなって、買い戻し圧力へと変わってくるわけです。そもそも逆張りの空売りは禁物です。天井形成を確認してから、売りポジションをとるようにしてください。と少し横道でしたが・・・。
 ただ、機関投資家(生損保、年金など)が保有する株券の数も限界があります。私は証券会社の情報部勤務のあと某信託銀行に出向になり、企業年金の株券を外資系証券に貸し出す業務を少しやらせていただきました。かっこよく表現しますとレンディングトレードです。経験期間は短かったのですが、経験する時期が良かったわけです。大変いい経験ができました。その時期は2003年3月。そうです、日経平均が7600円の安値を4月に付ける1か月前です。大手銀行株中心に売り優勢の地合いが続いていましたね。外国人投資家が株券を借りて、銀行株の空売りを仕掛けるんです。どんどん下がりました。でも、相手方の私は徐々に貸せる株券がなくなってきているのを気付いていました。
 簡単に言いますと在庫(企業年金から預託されている銀行株の株券)がなくなってきたんですね。希少価値が高くなるので、調達金利が高くなるのです。株券を借りて売る外人は支払う金利以上に相場下落によるサヤを稼がないと割が合わなくなるもんですから、必至になって売ってきます。だからあれだけ下がったのです。銀行のどこかが倒産すると思われたでしょう。でも、いずれ貸し出す株券はなくなりますよ。そうするとどうなりますか?もう、反転、上昇しかないんですね。今でも映像で記憶に残っています。"nothing"と何回返したものか(笑)。

(株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ 東野幸利)