資本市場と社会主義は併存出来るものか?答えは簡単ではありません。資本市場と民主主義は相性が良さそうなのはほぼ自明ですが、社会主義だからと云って、資本市場が一切成り立たない訳ではありません。
資本市場と民主主義がいい形で同時存在しているのは、云うまでもなくアメリカですが、日本は民主主義であるにも拘わらず、その資本市場は長らくアメリカとはちょっと違う性質を有しながら存在してきました。そして徐々にアメリカと同じような資本市場に近付いてきたと云えるでしょう。中国は、社会主義であるにも拘わらず、最近巨大な資本市場を作ってきた国です。
私は、資本市場と社会主義は同時存在し得ると思っています。貧富の差を完全に許容している国など今時存在せず、民主主義と社会主義の最大の差は、国政の意思決定プロセスにあるように思われるので、そのことと資本市場は、必ずしも相容れないものではないからです。計画経済と資本市場でさえも、極論すれば、同時存在が決して出来ないものとは云い切れないでしょう。
然しながら、市場を意のままにコントロールしようとすることと、資本市場とは、これは決して同時存在し得ない事柄です。何故なら資本市場のコアの仕組み・価値は、アダム・スミスが定義したように、情報を与えられた無数の参加者による、自由なリスク・マネーの再配分行為にこそあるからです。資本市場にはルールがあり、そのルールに則ることによって、初めてそのメリットを享受出来るものです。
今の中国の、なり振り構わない市場コントロール策は-それは買い支えであったり、とんでもない数の銘柄の売買停止などですが-、中国の資本市場の発達に、極めて深い傷を負わせることになる可能性があると思います。しかしそれでも尚、人民の不満を抑えることが必要でもあるのでしょう。中国は、その経済も資本市場も、長い目で見てもっともっと成長することには間違いないと思います。しかしこの国は、常に様々な波を伴って行くことを、決して忘れてはいけないですね。