アメリカのコダックが破綻したとのこと。時の流れを感じます。そして「変化」することの大切さをまざまざと見せつけられた気がします。コダックは云わずと知れた写真フィルムの名門・世界最大メーカーでした。
私は幼稚園生の頃からダークバッグに手を突っ込んで黒白フィルムの現像をしていたカメラ小僧(もしくは写真小僧)ですから、コダックには大きな馴染みがありますし、そこはかとない感慨があります。どれだけの長さのトライXを自分で現像したでしょうか。フィルムは物理的な立体構造物で、現像の終わった黒白フィルムの裏面を見ると、グレースケールの大小によって高さが微妙に違い、例えば建物を撮ると、フィルムの上にとても薄く、しかし確かに立体的に、建物が建っているように見えたりします。形あるものは壊れる。この立体構造物が微妙に崩れると、それから映し出されるものやプリントしたものにも、或る程度の風化感が出て、それが味になります(と、私は理解しています)。
私の友人のTM氏は、日本を代表する写真芸術家の一人ですが、彼にフィルムの現像を教えたのは何を隠そう私です。高校の時、写真部部長で彼は会計でしたが、何故か私は金融の道に進み、彼は写真の道を貫きました。彼は恐ろしく解像度の高い、8x10(エイト・バイ・テン)などの黒白フィルム写真を芸風としていましたが、科学にも明るい彼は、環境問題などの観点から銀塩フィルムの廃れ行く未来を推測し、自らその写真芸術を表現するための手段を、銀塩モノクロから違うメディアに移していきました。慧眼であり、科学的であり、優れた決断力と勇気と云えるでしょう。コダックにはそれがなかった。
しかし何事にも遅すぎると云うことはない筈です。今日はこれからの全ての未来の初日です。コダックの復活を期待したいと思います。