巷では「入札」のニュースが騒がれています。なんでこんなに情報が漏れるのだろうかとか、色々と云いたいこともあるのですが、具体的なこの話はかなり脂っこいので、今日は純粋に「入札」の仕組みについてのお話をひとつ。
入札には幾通りもの方法があります。競争入札、指名入札。多くの数のものを入札に掛ける時(例えば新規公開株の入札など)の値段の決め方も、落札者全員が結果として同じ値段で買う方式(我が国のブックビルディング方式など)もあれば、かつて我が国でも採用した時期があるように、落札者によって値段が違う方式もあります。築地に於ける魚の入札も、独特のルールがあります。そして一つのものを入札に掛ける時も、絵画のオークションのようにみんなが見える場でせり上がっていく方式もありますし、公共事業の入札のように、お互いの札がブラインドで分からないものもあります。公共事業の場合は、これがブラインドになっていないと、それは即ち談合であり、違法行為となります。
数ある入札の中で、私が「むぅ、これは巧くできている!」と思ったのは古本(稀少本など)の入札の仕組みです。入札者は、札を3枚入れられます。そしてもちろん一番高い値段で札を入れた人が落札するのですが、自分の札だけが自分より高い場合、例えば自分の札が1番目と2番目に高い札であった場合は、2番目の値段で落札できるのです。「どうしても買いたい!」と云う人の欲求を満たしつつ、無意味にべらぼうに高い値段を払わせない。これは中々良く出来ています。恐らく稀少本を落札しようとする、或る意味で稀少なファンを、疲弊させずに長期安定的な上顧客に育てるために編み出された、古本屋さんの知恵ではないでしょうか。

こう云う「商人の知恵」が私は好きです。優しくて、しかし優しいだけでなく、いい意味で人間臭くて、好きです。そんな知恵を、私たちも真剣に考えていきたいと思います。