今朝の日経新聞の経済教室に、川本裕子さんが日銀総裁人事のプロセスについて、的を射た意見を書かれていました。その内容についてはここでは触れませんが、その中に「政策決定は常に後追いのタイムラグを伴う不完全な経済情報に基づくしかない」と云う一文がありました。このフレーズを読んで、グリーンズパン・前FRB議長が「私の履歴書」の中で、「中央銀行総裁の職は、バックミラーを見ながら車を運転するようなものだ」と書いていたことを思い出しました。これは至極名言だと思います。
しかし思うに、中央銀行総裁の職に限らず、企業経営者の仕事も、或いはトレーディングと云う作業も、延いてはその他モロモロの人の営みは、なべてバックミラーを見ながらの運転のようである気がします。一方で、寺山修司によると-これはコトバを創ることを一生の仕事にした人のコトバを不正確に引用することに多大な申し訳なさを感じるのですが-、確か、未来は修正できないが過去は修正できる、と書いていたと思います。
寺山修司に限らず、コトバを仕事にする人、即ち作家は、経営者等とは全く正反対の作業をする人達のように思えます。見えるものを見て、変えたいように変え、その出来上がりを確認する。ただそれがどのような効果・影響を読み手の中にもたらすかは、或る意味、皆目見当がつかない。これは芸術家は皆そうでしょう。バックミラーを見ながら運転するが、自らの行き先を決めていく者。視界良好ではあるが、そもそもの行き先が不明な者。人の作用はいずれも不確定ですね。